がん電話相談から

保険拡大「ロボット支援下手術」身近に

がん手術の現場に、医師がロボットを操作して行う「ロボット支援下手術」が増えている。がん研究会などによる「がん電話相談」にも、ロボットを用いた手術への質問が寄せられ、関心が高まっている。昔からある医師の手で開腹・開胸を行う手術と比べ、患者の体への侵襲(負担)が少なく、従来の腹腔鏡を使った手術よりも患部が見やすく、繊細な作業が可能になる。保険適用の拡大や執刀医の増加で、がん患者にとって身近な手術となりつつある。

(金谷かおり)

がん研有明病院は平成26年、米インテュイティブサージカルの手術支援ロボットを導入。30年に「ダビンチXi」という機種に更新し、今は3台が稼働中だ。

ロボット支援下での手術件数は令和元年が416件だったが、3年に695件、今年は1~4月で245件(年730件超ペース)と、新型コロナウイルス禍で手術件数が伸びない中でも増加。7つの診療科で行っている。

ダビンチXiは、患部を手術するロボット本体と、執刀医がロボットを遠隔操作する「サージョンコンソール」などで構成。ロボット本体には鉗子(かんし)やカメラがついた4本のアームがあり、執刀医がコンソールの画像を見ながらアームを操作する。ロボットが自動で動くのではない。操作は訓練を受けた執刀医が行うのだ。

直腸がんの場合

消化器外科では平成30年5月、直腸がんでロボット支援下手術を始め、今年5月までに約430人が受けた。担当した山口智弘医師は同手術の特長を、①腹腔鏡手術で使う鉗子とは異なり、多関節機能で先端を自由に曲げられ、「手振れ防止機能」もついている②3次元(3D)フルハイビジョン画像を約10倍に拡大して見られる-とした。

開腹と比べて患者への負担が少なく、特に狭くて深い骨盤内では腹腔鏡手術よりも「正確で繊細」な手術が行えるという。「開腹や腹腔鏡では肛門を温存不可能な場合も、ロボット支援下なら温存できることがあり、患者の満足度が高い」と話す。

直腸がんの手術の一種で「直腸低位前方切除」の場合、保険適用前は自費診療で約180万円だったが、30年度以降は保険適用となり自己負担額が腹腔鏡とほぼ同じ約55万円に軽減された。高額療養費制度を活用すれば、年齢や収入にもよるが自己負担をひと月あたり10万円程度に抑えられる。

保険適用は24年度の前立腺がんを皮切りに腎がん、食道がん、胃がん、直腸がん、肺がん、子宮体がん、膵(すい)がんなどへ拡大。今年度は結腸がんなどが対象となった。

ただし鉗子で患部に触れる感触が分からない「触覚の欠如」があるというが、山口医師は「視覚で補うことが可能なため実際の手術で困ることは極めて少ない」と話す。

会員限定記事会員サービス詳細