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円安時代の今だからこそ 論説副委員長・長谷川秀行

米ドルや日本円などの紙幣(ロイター=共同)
米ドルや日本円などの紙幣(ロイター=共同)

新型コロナウイルス禍で3度目となる今年の夏は猛烈に暑い日が続き、東京では梅雨も明けた。汗かきの筆者にとって猛暑でのマスクは苦痛でしかない。だから最近は、マスクを外せるときにはこまめに外すよう心掛けている。マスクを着けて熱中症になるようではたまったものではない。

これは、コロナ禍での経済活動についてもいえることだ。感染対策に固執しすぎて、いたずらに経済活動を制限するようでは元も子もない。その点で特に注目しているのが、訪日外国人客(インバウンド)の拡大策である。

1ドル=136円台まで下落した最近の円安は、コロナ禍で落ち込んだ訪日客を取り戻すための格好の追い風となる。世界経済フォーラム(WEF)が発表した最新の旅行・観光競争力ランキングで日本は初の首位になった。この好機に円安を生かさぬ手はない。

当然、政府も対応しており、10日には約2年ぶりに訪日観光客の受け入れを再開した。それでも入国者は1日2万人に制限され、観光客も当面は添乗員同行のツアー客限定である。水際対策を緩和したといっても厳格さは残る。

訪日客にマスク着用を徹底させられるかといった懸念があるのは分かる。ただ、国内で行動制限の緩和が進む中、訪日客の行動ばかりを警戒しても始まらない。個人客の受け入れを含め、もう少し柔軟にできないか。円安時代の今だからこそ、これを生かす具体的な道筋をもっと明確にすべきだ。

円安をめぐっては、とかく負の側面ばかりに目が向かう。円安に伴う輸入インフレが物価高を助長し、家計を苦しめている状況は確かに深刻である。一方で円安は恩恵ももたらす。企業が過去の円高対応で海外生産を進めた結果、円安時に輸出拡大という恩恵を受けにくくなった面はある。それでも円安を追い風に高い利益をあげる企業は今もたくさんある。

問われるべきは、円安を成長につなげられるかだ。期待できる分野は、もちろんインバウンドだけではない。例えば農産品輸出もそうだ。日本の輸出品には和牛のような富裕層向けが多い。円安で価格競争力がつけば、新たな市場拡大への布石となり得よう。

円安に身構えるだけでなく、攻めの手立てを同時に講じる。これは参院選で議論すべきテーマでもある。政治が円安の不安をあおるばかりでは展望は開けない。

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