「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

青柳流が投手陣に浸透、1強5弱の戦国絵巻を塗り替えろ!

青柳晃洋の膝元を意識した投球術がチームに浸透し、好循環をもたらしている(撮影・松永渉平)
青柳晃洋の膝元を意識した投球術がチームに浸透し、好循環をもたらしている(撮影・松永渉平)

〝青柳流〟の浸透が1強5弱の〝戦国絵巻〟を塗り替えるでしょう! ならばヤクルトへの挑戦権は虎が得るはずです。阪神は74試合消化時点で34勝38敗2分の借金「4」で首位・ヤクルトと14ゲーム差の4位です。しかし、2位の巨人とはわずか3ゲーム差。セ・リーグはヤクルトの独走状態で完全な1強5弱と化していますが、谷本修取締役オーナー代行(57)が15日の株主総会で語った「17年ぶりのプロジェクト、ペナント奪回を誰一人として諦めていない」を実現するためには、まずは巨人を追い越し、現状の〝戦国絵巻〟を書き換えることです。青柳晃洋投手(28)の投球術を模範とした虎投がさらに安定するならば、夢はまだまだ消えていません。

■防御率はリーグトップ

強いですね。24日からの中日3連戦(甲子園球場)は6対4、10対0、6対5で3連勝。これで6月は20試合で14勝5敗1分です。何度も、何度も嫌みなほど書きますが、3月25日からのシーズン開幕でいきなり大コケ(開幕9連敗を含む17試合を1勝15敗1分)しなければ、今ごろはヤクルトと首位戦線で激しい戦いを繰り広げていたはずですね。まあ、そんなことを繰り返して言ってみても、終わったことは取り返しはつきません。気分を変えて、ここは好調なチームに対して夢を膨らませることに〝専念〟しましょうか。

5月中旬からチーム状態が上がり、3月~4月の出遅れを取り戻しつつある原動力はなにか。今さら、ここで専門家ヅラして書く必要もないでしょうが、やはり安定感バツグンの投手陣でしょう。パ・リーグとの交流戦を勝ち越したセ・リーグの球団はヤクルト(14勝4敗で交流戦V)と阪神(12勝6敗)だけです。共通点は投手陣の安定です。

ヤクルトは71試合消化時点でチーム防御率3・04です。阪神はリーグトップの2・75ですね。前評判では強いと言われていたパ・リーグ6球団に大きく勝ち越した原動力も、やはり投手陣が安定しているからでしょう。阪神の場合、交流戦で大山が打ちまくり、得点能力が向上したことは大きかったのですが、根底には相手打線に無駄な点をやらない投手陣の踏ん張りがあったわけですね。

では、阪神の投手陣はどうして安定しているのか。もちろん、先発から中継ぎを経て、セットアッパー湯浅、抑えの岩崎の勝ちパターンが確立していることも強みですが、先発陣に絶対的な柱が存在することが大きいですね。そう、今や大エースと呼んでもいい青柳の存在感です。

青柳はここまで11試合に登板して8勝1敗、防御率1・49はリーグトップの数字です。完封1を含む完投数も3試合あります。分業制の現在のプロ野球にあって、試合を投げ切る姿勢にも満ちあふれています。

「かつての青柳は無駄なボール球も多く、自滅するパターンもあった。それが今ではゴロを打たせる投球術をつかみ、ピンチになっても一気に崩れることが少なくなった。投球テンポも良くて、野手も守りやすい。なので必然的に打線の援護もある。全てが好循環だ」とは阪神OBの言葉です。

青柳だけではなく、4勝5敗と現状では負けが先行していますが、西勇輝も12試合に登板して防御率は1・99です。他にもウィルカーソンやガンケル、伊藤将司が先発ローテーションで回っています。セ・リーグ全体を見ても、巨人や広島、DeNA、中日よりも投手陣の質と量は圧倒しているでしょう。特に、ここに来ての巨人の投手陣のひどさは目を覆わんばかりですから、5弱の中で抜け出せる力を持っているのは阪神だけでしょう。

そして、青柳の存在は今後の投手陣全体の安定にも大きな影響力を及ぼしている-という専門家の声があります。それは、青柳が成功している投球術をヒントにした捕手陣の配球が他の投手にも好影響を及ぼしているからだそうです。

「青柳のゴロを打たせて取るポイントは打者の膝元を突いているからだ。特に左打者の膝元を直球で突いたり、スライダー、カットで食い込んだり。それで成功している。リードしている捕手陣も青柳の投球術を参考に、他の投手をリードする時も打者の膝元を意識させる配球をしている。青柳が投手陣にもたらした相乗効果はすごいんだ」

阪神OBのひとりはそう指摘していました。打たせて取る青柳のピッチングから捕手は学び、いや共同作業の中で凡打に打ち取る術を実感し、他の投手をリードする時も〝青柳流〟を臨機応変に使い分けているといいます。今や〝青柳流〟は虎の投手陣の打者攻略バイブルとなっているというわけですね。

■7月中旬には2位浮上を

さあ、ペナントレースは残り69試合です。7月、8月、9月とあと3カ月。まだまだ何が起こるか、分かりませんよ。そして、阪神は夢を諦めてはならないはずです。15日の阪急阪神ホールディングスの定時株主総会で株主から厳しい質問を受けた谷本修オーナー代行はこう語りました。

「チーム全員が目指しております17年ぶりの優勝というのは、実はチームの中にも他球団から移籍した人間を除いてですね、優勝経験した選手がおりません。事業に例えると、まったく新しい事業を一からやっておるというようなところでございまして…(中略)。私どもチームとしては、17年ぶりのプロジェクト、ペナント奪回を誰一人としてあきらめてございません」

阪急阪神ホールディングスのトップ経営陣、そして株主に対して、逆転Vへの意気込みを熱く語ったのです。その時点でチームの貯金が20以上もあったヤクルトと借金生活の阪神には途方もない差があったにもかかわらず、勝率5割とか、クライマックスシリーズ圏内という目標値ではなく、あくまでも大逆転の17年ぶりのリーグ制覇を掲げたわけですね。

大風呂敷を広げた…と言われるのは覚悟の上だったでしょう。ならば、まず第一段階として1強5弱の〝戦国絵巻〟を塗り替えなければなりません。上にいるにはヤクルトと巨人、広島ですが、現状の投手陣の質と量を考えれば、敵はヤクルトだけではないでしょうか。巨人とは3ゲーム差。これは一気にひっくり返せるでしょう。いや、目標値を現実的にするならば、7月中旬までには2位に上昇し、ヤクルトへの挑戦権を得なければなりません。

その昔、阪神球団の幹部の人がよく話していましたね。「とにかくオールスターまでに勝率5割キープ。コレが優勝を狙える最大の条件だ。勝率5割以上あれば、終盤戦には何が起きるかわからない」と-。なんだか、その球団幹部の顔が目に浮かびます。

〝青柳流〟は表千家でも裏千家でもありません。虎投の点前作法は打者のバットを湿らせること…でしょうか。さあさあ、責任者が言ったことはぜひともやってもらいましょう。17年ぶりのプロジェクトは大事な大事な中盤戦です。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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