参院選2022 混沌の先に

少子化 「結婚したい。でも、子供はいらない」

「結婚はしたい。でも、子供はいらない」。東京都内に住む女性(24)はそう本音を漏らした。

大学卒業後に正規雇用で採用された職場は、休日にも関係先から頻繁に電話がかかってくるなど精神的につらく、追い込まれる形で退職。現在は派遣社員として働くが、今月末に雇用契約が打ち切られる。

給与は手取りで月20万円ほど。正社員男性と同棲し、家賃や光熱費は全額負担せずに済んでいるが、奨学金約400万円の返済、食費や通信費などの支払いで月末には消えてなくなる。この先、安定した職を得られるかも分からない。

不安定な雇用形態で働く中、結婚に〝活路〟を見いだすようになった。でも、子供を持つという選択肢は考えられない。「自分が生きていくだけで精いっぱい」。女性は言い切る。

令和3年の出生数は約81万人で、6年連続で過去最少を更新。経済的な不安や受診控えなど新型コロナウイルス禍も影響しているとみられ、4年の出生数は80万人を下回る可能性が高い。婚姻件数も戦後最少となった。少子化を食い止める手立てはあるのか。

少子化社会対策白書によれば、昭和60年に5%未満だった50歳時の未婚割合は令和2年に男性28・3%、女性17・8%に到達。25~34歳の未婚者が独身でいる理由は、男女とも「適当な相手にめぐり会わない」が最も多かった。「異性とうまくつきあえない」という理由も増加傾向にある。

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「出会いに消極的だったが、どんどん紹介してもらえた」。昨春、AI(人工知能)によるマッチング支援を始めた「いばらき出会いサポートセンター」(茨城)には、利用者らから喜びの声が届く。

価値観診断テストなどを基にAIが理想の相手を選び、結びつける取り組みは、スマートフォンで利用できる手軽さも受けて好評だ。昨秋からはオンライン形式のお見合いも始めた。

コロナ禍で落ち込んでいたお見合い件数は、令和2年度の1114組から3年度は2257組に倍増。うち930組が交際を開始した。同センター事務局参与の木村英一氏は「成婚に至る人がさらに増えてくれれば」と期待する。

出会いの場づくりは各地で進むが、結婚に向けては別の壁も存在する。

国の報告では30~34歳の男性の有配偶率は正規職員・従業員が6割近いのに対し、非正規職員・従業員は2割台に下がる。「不安定な雇用形態、収入の低さから結婚に踏み切れずにいる若者も多い」。結婚支援を行うNPO法人「結婚相談NPO」(東京)の影山頼央(よりひさ)理事長はそう語る。

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若者の貧困や労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE」(東京)の渡辺寛人事務局長は、大卒後数年で正社員の立場を離れ、当時の過酷な働き方のトラウマから、次の職場では正規雇用を選ばずに非正規化していった20~30代を多く見てきた。

子育て世帯の年間平均所得は国の調査では700万円台だが、「非正規は年収300万円を超えることが難しい」(渡辺氏)。年功序列の賃金体系が崩れる中で、30代でも「年収500万円を超えられない正社員も増えている」という。

「今は働いていても、生活が貧しい若い人が増えている。結婚したくてもできない、できても子供は育てられない、というのが多くの若者が直面している現実だ」。渡辺氏はそう話す。

中央大の山田昌弘教授(社会学)は「若年層の将来不安を取り除かなければ結婚や出産に向かう人を増やすことは難しい。収入基盤の安定を図ることが何より重要だ」と指摘。正規・非正規の格差是正、最低限の所得保障、奨学金返済の減額免除など思い切った政策が求められるという。

政府は、少子化対策を含めた子供関連予算を倍増する方針だが、財源は明確に示していない。

「欧州では少子化対策に国内総生産(GDP)の5%近くを振り分ける国も出る中、日本の子育て支援に振り分けられる予算規模は小さすぎる。インパクトある予算措置、政策を示さなければ、活力ある国としての未来は見えてこない」。山田氏はそう力を込めた。(三宅陽子)

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