お客さまと共に20年 「5本の樹」計画で都市の生物多様性保全推進

積水ハウス株式会社は、「5本の樹」計画として都市の住宅地に緑のネットワークを作り、生物多様性保全を推進してきました。琉球大学と共同で「5本の樹」計画の成果を検証し、都市の生物多様性を定量評価する仕組みも世界で初めて構築。今年3月には「第30回地球環境大賞(フジサンケイグループ主催)」を受賞しました。「5本の樹」計画への想い、そして、同社とともに庭づくりに取り組んだお客さまの声などを聞きました。

「5本の樹」計画を取り入れた庭
「5本の樹」計画を取り入れた庭

積水ハウス株式会社 執行役員 環境推進部長 兼 温暖化防止推進室長 近田智也

鳥や蝶を呼び込む 庭づくり

「5本の樹」計画には、“3本は鳥のために、2本は蝶のために”という想いが込められています。都市化に伴い、都市で壊れてしまった生態系を少しでも回復させる取り組みとして、2001年からお客さまのお庭で地域に適した在来樹種を植樹する「5本の樹」計画を始めました。

この計画は、人が適切に手を入れることによって生態系の豊かさを維持する日本古来の里山をお手本に、単に緑を植えるという従来の緑化ではなく、地域の気候風土に調和し、鳥や蝶などと相性が良い在来樹種を中心に植樹する庭づくりです。

都市に在来樹種を植樹したお庭が点在することで、生態系が周囲の自然環境とつながり、まちなかにも鳥や蝶が飛んでくるようになります。生息域を増やすことで生態系の保全に貢献しており、これまでの21年間で累計1800万本以上、植樹してきました。

生物多様性の保全に貢献

この緑のネットワーク化が都市の生物多様性にどの程度貢献できているのかを琉球大学と共同で検証しました。同大理学部の久保田研究室が保有する生物多様性に関するビッグデータは、様々な生物の生息域などに関する情報を網羅していることから、植樹地ごとにどの樹にどんな生物が利用するかが分かります。当社が植樹した樹木の本数・種類・位置の実績データと、このビッグデータを使い、分析することで、世界で初めて生物多様性保全や再生に関する取り組みの実効性を定量的に評価しました。

その結果、「5本の樹」計画は全国の都市部の住宅地に植樹した地域の在来樹種を10倍に増加させ、住宅地に呼び込める鳥の種類を2倍に、蝶の種類を5倍にできたことが分かりました。この成果を昨年、発表して、地球環境大賞をいただいたことで、「5本の樹」計画を多くの方々に知っていただくきっかけになりました。

住宅地に植樹した地域の在来樹種数は約10倍に増加
住宅地に植樹した地域の在来樹種数は約10倍に増加
鳥類は約2倍の種類、蝶類は約5倍の種類を住宅地に呼び込める効果
鳥類は約2倍の種類、蝶類は約5倍の種類を住宅地に呼び込める効果

「5本の樹」で「わが家」を幸せに

お庭に鳥や蝶が飛んでくるのを家の中から大きな窓を通じて眺めると、幸せな気持ちになります。「5本の樹」計画には幸せを創出するという面もあります。

また、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みとしても良い事例になったのではないかと思います。環境に良く、社会にも良く、事業の役にも立ち、多くの社員が関わることができました。何よりも「5本の樹」計画に賛同してくださった、多くのお客さまに感謝します。

生物多様性の保全と言うと、難しそうに思われがちですが、「5本の樹」計画は、一人一人が楽しく取り組めるものです。一般の方々も含めて仲間を募る活動をしていきたいと考えています。

「5本の樹」計画の庭を取り入れた福岡県のKさん(ご主人)

「5本の樹」計画の庭を家族で楽しむ福岡県のKさん一家
「5本の樹」計画の庭を家族で楽しむ福岡県のKさん一家

鳥や蝶が来る庭を眺める幸せ

私も妻も家にたくさん樹がある環境で育ったので、家を建てるなら庭を造りたいと考えていました。コロナ禍になって子どもたち(小学5年生の長男、小学2年生の長女)を外で遊ばせてあげたいと、2020年11月に家を新築しました。

「5本の樹」計画の説明を聞いたとき、鳥や蝶が来るのはいいなと思いました。冬の間、まだ来てくれないねと話していたのですが、春からスズメが来るようになりました。ナツハゼにツバメがとまったり、ハクセキレイが降りてきたり、1年たった頃から鳥に認識してもらえたみたいです。蝶も来ます。ビオラにちゃんと種ができるのは、きっと蝶たちが受粉を助けてくれてるのでしょうね。

ツバメも在来樹種である庭のナツハゼを楽しむ(Kさん提供写真)
ツバメも在来樹種である庭のナツハゼを楽しむ(Kさん提供写真)

気に入っているのは、エントランスのモミジ。新芽が赤いんです。庭のミモザは何度も強風で倒れかけましたけど、太くなって、今年はよく咲いてくれました。デッキでビールやワインを飲みながら、ぼーっと庭を眺めている時間が好きですね。夜にライトアップしてみたら、すごくきれいでした。

妻はモネの「睡蓮の池」という絵が好きで、庭に造った池でスイレンを育てています。3回くらい咲きましたよ。子どもたちもメダカを飼って楽しんでいます。また、遊びに来た子どもの友達から、「樹がたくさんあっていいね」と言われて喜んでいますし、率先して庭の水やりもしていますね。鳥や蝶が来てると、嬉しそうにしています。

このように自分たちの生活が豊かになっていることが、結果的に地球環境に役立っていると思うと、より嬉しい気持ちになります。

Kさん宅のエントランス。写真の赤いモミジが特にお気に入り
Kさん宅のエントランス。写真の赤いモミジが特にお気に入り
綺麗に咲いている池のスイレン(Kさん提供写真)
綺麗に咲いている池のスイレン(Kさん提供写真)
庭木の水やりも家族で楽しむ
庭木の水やりも家族で楽しむ

Kさん宅のお庭の設計を担当した積水ハウス株式会社 北九州支店 山下幸二

Kさんのお話から雑木林のような庭を提案

Kさんご夫婦は、もともと植木がお好きなようでしたので、生きものも呼び込める雑木林をイメージした庭を提案させていただきました。

奥さまと一緒に久留米市まで植木を探しに出かけたり、庭のイメージに合う、お好みの樹を選んでいただいきました。気に入っていらっしゃる新芽が赤いモミジは希少なものだったようで、その後もなかなか入荷してこないと聞いています。

お宅を訪れるたびに花も増えています。ここまできれいに庭を維持してくださり、時を経るごとにグレードアップされているのを見ると、外構造園担当冥利に尽きます。

お客さまの心が安らぐ提案を

外構提案の際、まずは家で自然を感じられるようにしませんかとお話します。自然を身近で感じられることで、自宅がより幸せな場所になると考えているからです。季節ごとに色が移り変わる庭木を見るだけでも、心が安らぎます。加えて生きものたちと豊かにつながることができると、より一層自然を感じられ、心が安らぐと考えています。そこでまずは地域の蝶や鳥を呼び込める在来樹種を提案しています。当社が発行する「庭木セレクトブック」には、地域毎に適した在来樹種と、そこにやってくる生物を一覧で紹介しており、お客さまと一緒に見ながら庭づくりのお話で盛り上がっています。提案に賛同いただいたお客さまから、お引き渡しの数年後に連絡をいただき、「子どもたちと、鳥が庭に来るたびに、自ら写真を撮って図鑑で何の鳥だったのか、夢中になって調べています。」という声をいただいた事もありました。自分の仕事がお子さまの成長にも良い影響があるんだと思うと、より嬉しい気持ちになりますね。

これからも「5本の樹」計画の素晴らしさを伝えながら、一人でも多くのお客さまに喜んでいただける提案を続けたいと思います。

樹木の特徴と呼べる鳥と蝶が掲載されている「庭木セレクトブック」
樹木の特徴と呼べる鳥と蝶が掲載されている「庭木セレクトブック」

琉球大学理学部 久保田康裕教授

「5本の樹」計画は、生態学的に見てもコンセプトが素晴らしい

私たちの研究チーム(株式会社シンク・ネイチャー)では、生物の豊かさを「見える化」した「日本の生物多様性地図化プロジェクト:J-BMP」を公開しています。生物の分布情報を網羅的に集めると同時に、それぞれの種について、植物だったらどのような花をつけるとか、動物だったらどのような木の実を食べるといった、生態的特性あるいは遺伝子などの情報も加え、生物多様性ビッグデータとして整備したものです。

このビッグデータによって、生きものの食う、食われるの関係も分析することができるようになりました。例えば、ある地域にこのような樹を植えると、その木の実を食べる鳥や葉を食べる蝶を呼び込めるという予測ができるわけです。

「5本の樹」計画は、地域の在来樹種を植樹して、地域の鳥や蝶を呼び込むというものです。つまり、自然界で見られるような生物のつながりを再生するという考え方です。これは生態学的に見て、しっかりとしたコンセプトになっています。

その効果を数値的に評価できれば、都市の生物多様性保全再生に貢献する事業として定義できるのではないかと、われわれは考えました。1戸1戸のお庭は小さくても、長期間、全国規模で庭木の植栽を続ければ、鳥や蝶の生息場所を回復させている効果に驚きました。

平野部で川が流れている場所が多いなど、本来、都市は生物多様性にとっても大事な場所です。今回、民間の取り組みで、都市の生物多様性再生の効果量を評価できた事は画期的だと思います。このような取り組みが広がることで、都市が人と様々な生物が共生する場所になっていくことを期待しています。

積水ハウス株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 仲井嘉浩

生物多様性保全活動の輪を広げたい

「5本の樹」計画による生物多様性保全の実効性評価の取り組みで「第30回地球環境大賞」を受賞しました。

「5本の樹」計画は、里山の思想をお手本に、まちなかであっても鳥や蝶を復活できないかという思いから始めました。お客さまの協力を得て、お庭にその地域の気候風土にあった在来種を植栽することで、生物多様性を回復できるのではないかと考えました。

今般、都市の生物多様性の定量評価の仕組みを世界で初めて構築し、「5本の樹」計画の活動の効果を検証しました。その結果、多くの家に在来樹種を植えれば、都市においても緑のネットワークが形成され、これらが生物多様性の保全・回復へ貢献できることを確認できました。

この評価手法は汎用性があるため、他の企業や個人の生物多様性保全活動の効果検証にも使えます。これまでに蓄積した生物多様性保全のノウハウを今後も広く社会と共有し、保全活動の輪を広げていきたいと考えています。

当社は中長期のビジョンとして”「わが家」を世界一幸せな場所にする”を掲げています。このビジョンの実現に向け、皆さまの暮らしを、さらに豊かにする提案を続けてまいります。

積水ハウス本社の眼前に広がる里山
積水ハウス本社の眼前に広がる里山

どの樹種にどんな鳥や蝶が集まってくるのか、にまで言及した庭木セレクトブックのWEB版をご覧いただけます。

※簡単なアンケートがございます。

https://www.sekisuihouse.co.jp/request/gohon_sp/method/form.html

提供:積水ハウス株式会社

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