【エルマウ(ドイツ南部)=田村龍彦】岸田文雄首相は27日の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、ロシアのウクライナ侵攻を受けた食料危機に関し、ウクライナや途上国への支援を打ち出した。食料危機は途上国の政情不安に直結するほか、西側諸国の制裁が原因だとするロシアを利することになりかねない。支援を通じ、小麦などの世界的な価格高騰を抑制できれば、参院選で争点となっている物価高にも一定の効果が期待できる。
「ウクライナ危機に伴う食料価格の高騰に対応するため、G7として結束していくことが重要だ」
首相は27日の討議でこう訴えた。
ウクライナは小麦やトウモロコシの世界有数の生産国だが、ロシアが黒海を封鎖して海上輸送が途絶し、アフリカや中東などの輸入国は食料危機に直面している。
外務省幹部は「途上国はエネルギー価格より食料価格高騰の影響を受けやすい」と語る。途上国は食料難で政治が不安定化しやすく、事実、イランなどでデモや暴動が発生している。
日本が輸入する小麦は米国産が多く、ウクライナ産が途絶えても直接の影響はない。ただ、もともと小麦価格は米国の不作などの影響で高値水準にあった。ウクライナ危機を受けて、途上国も含め各国が買い占めに動けば相場全体の上昇につながる。
政府関係者は「日本は食料輸入国なので、世界全体の需給が逼迫(ひっぱく)しない方がいい。ウクライナや途上国への支援は日本の食料安全保障でもある」と語る。
ロシアは、世界的な食料危機はG7などの対露制裁が原因だとするプロパガンダを続け、途上国を取り込もうとしている。首相が27日にG7サミットに合わせて会談するアフリカ連合(AU)議長国のセネガルのサル大統領も、今月3日にプーチン大統領と会談した際、対露制裁の解除に賛意を示した。
首相はサミットで「危機の原因はロシアの侵略だということをしっかり示す必要がある」と述べ、アジアやアフリカ諸国への説明に取り組む方針を示した。