混沌の先に 参院選2022

原発・エネルギー 安定電源 理想と現実

35・7度。27日も東京都心は炎暑にあえいでいた。異例ともいえる暑さが電力需要を押し上げ、26日には東京電力管内で需給の逼迫(ひっぱく)が予想されたため、節電を求める「注意報」が政府によって初めて発令された。

なぜ、電気が足りないのか。背景には、脱炭素化に伴う再生可能エネルギーの導入拡大を受けた火力発電所(火発)の稼働率低下や休廃止の増加などがある。

クリーンなエネルギーは、持続可能な開発目標(SDGs)のテーマの一つだ。どこで、どのように生産されたのか、衣食住に関わる商品の来歴が問われる時代において、エネルギーもその例外ではない。

夏至を迎えた21日、東京湾に架かるレインボーブリッジは日没後もライトアップされず、湾岸都市の薄闇に溶け込んでいた。首都高速道路は脱炭素化の一環として5つの橋梁(きょうりょう)の照明を落とした。7月7日にも行い、2日間で約4800キロワット時の節電につなげるという。約2トンの二酸化炭素削減に相当する節電量だ。

今回の参院選でも、濃淡の差はあっても各党とも脱炭素化の実現に異論は見られない。しかし、ウクライナ危機に伴う燃料価格の高騰で、足元の生活経済はなりふり構ってはいられない状況に見舞われてもいる。

電気代にしわ寄せ

「燃料の安定調達を確保できないリスクが高まっている」。今月7日、5年ぶりに開催された政府の電力需給に関する検討会合の席上、萩生田光一経済産業相は危機感をあらわにした。

発電燃料が値上がりすれば、そのしわ寄せは電気代へと向かう。SNS(交流サイト)に投稿された〝悲鳴〟が反響を呼んだのは、その7日後のことだった。

《大ピンチです》

投稿したのは、新潟県阿賀野市の遊園地「サントピアワールド」。契約先の新電力会社から電気代の値上げを伝えられ、経営存続の窮地に陥った。提示された見積もり額は年間約3580万円。昨年度の約1820万円から倍増していた。

メリーゴーラウンドで約3千個使われている電球の3分の1を撤去するなど節電に努めるが、「焼け石に水だ」と高橋修園長は話す。やむを得ず7月から乗り放題パスの値上げを決めたが、「電気代の上昇分を完全に相殺できるわけではないので、残りは企業努力で乗り切るしかない」。

参院選の公約では、各党とも原発の再稼働の是非を踏まえたエネルギー政策を描き出している。その理想は、こうした厳しい現実に応えられるのか、有権者の審判を仰ぐことになる。

「社会にダメージ」

もちろん、節電や省エネといった試みをおざなりにはできない。例えば、1都3県の世帯数の約6割にあたる1千万世帯が、同時に消費電力50ワットのテレビ(32型)を消せば、単純計算で50万キロワットの節電となる。大型火発(100万キロワット)の半分に相当する規模だ。

節電を勢いづけるため、東京電力は7月から電力消費を標準より抑えた家庭にアマゾンギフト券などと交換できるポイントの付与を始め、9月までに延べ45万人の参加を見込んでいる。

老朽化で停止中の火発も一部で再稼働される。

しかし、仮に夏を乗り切ることができたとしても、さらに需要が高まる冬が来る。問題の根本的な解決には、ベースロード(基幹)電源の議論が避けられない。それは、エネルギー資源に乏しい日本の「現実」と向き合うことでもある。

エネルギー分野のコンサルティングを手掛けるユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表は語る。

「低コストで昼夜を問わず、安定供給できる電源を大黒柱としなければ、社会が深刻なダメージを受けることは現状を見ただけでも分かるはず。国民にとって本当のメリットとは何かを見極めることが必要だ」(玉崎栄次)

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