書評

『ブラックアウト アメリカ黒人による、〝民主党の新たな奴隷農場〟からの独立宣言』キャンディス・オーウェンズ著、ジェイソン・モーガン監訳、我那覇真子訳、福島朋子共同翻訳(方丈社・2530円) 黒人の「被害者意識」突く

『ブラックアウト』
『ブラックアウト』

本書の著者は、アメリカの下流家庭に育った若い黒人女性である(1989年生まれ)。

書名の「ブラックアウト」は、民主党・メディア複合体が掲げる「偽りの灯」を消すこと、および「BLACK=黒人の」「OUT=脱出」を実現することの2つを含意する。

今日のアメリカにおける黒人は、国の根幹を巡る闘争の震源地にいるという著者は「被害者意識を持続的に醸成してきた民主党の政策が、いかに黒人社会の衰退を招いたか」、さらには米国全体の壊(え)死(し)を招きかねないかを鋭く描いていく。本書には、黒人女性だからこそ遠慮なく書けたといえる部分が多々あり、そこが大きな魅力となっている。一例を挙げておこう。

2018年、トランプ大統領(当時)が指名したカバノー最高裁判事候補の人事を、左派が「性暴行疑惑」を用いて阻止しようとした騒動があった。著者は魔女狩りと表現し、告発者の3女性や支援したフェミニストらを「今回は魔女が狩りをしている」と批判する。「女性も男性と同じように悪事に加担する可能性があることは明らか」で、「女性たちが噓を言う動機」をもっと鋭く問うべきだという。要するに左翼が性暴行の濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着せて保守派判事を葬り去ろうとした、まさに唾棄すべき事件であった。著者は、白人女性に口笛を吹いたとされた黒人少年が周りの白人たちにリンチで殺された1950年代の事件を挙げ、現代のフェミニストらの行為も同質のものだという。

著者は「黒人の命は大事」(BLM)運動も厳しく批判する。白人警官が丸腰の黒人を殺害する例は極めて稀(まれ)で、黒人同士のトラブルが殺人事件の圧倒的多数を占めるにもかかわらず、BLMと主流メディアが逆の像を作り上げ、「黒人社会全体が被害者意識を維持し、だからこそ(民主党という)救世主が必要」と感じるよう洗脳工作が行われてきた。最近、極左集団アンティファの脅迫を受けることが多いという著者は、「彼らの精神的な先達」はKKK(白人優越主義者の秘密結社)だと喝破する。資金流用疑惑で辞任したBLM創設者の豪邸をアポなしで訪れ面会を求めるなど行動の人でもある。政界進出も視野に入っていよう。

評・島田洋一(福井県立大教授)

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