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東京・神田「いわし料理 すゞ太郎」 脂のり甘味広がる入梅イワシ

脂ののった入梅イワシの刺し身と白焼き。うまみを存分に楽しめる=東京・神田の「いわし料理 すゞ太郎」(三尾郁恵撮影)
脂ののった入梅イワシの刺し身と白焼き。うまみを存分に楽しめる=東京・神田の「いわし料理 すゞ太郎」(三尾郁恵撮影)

安くておいしい庶民の魚として人々に愛されるイワシ。梅雨入りの6~7月に獲(と)れるマイワシは産卵期を前に栄養を蓄えており、特に脂のりがよく、「入梅イワシ」と呼ばれている。梅雨のジメジメとした気候で落ち込んだ気持ちを払拭しようと、都内のイワシ料理専門店を訪ねて、この時期ならではのごちそうを味わった。

JR神田駅近くで25年以上営業する「いわし料理 すゞ太郎」。「ランチで手頃にイワシのおいしさを知ってもらいたい」と昼は新鮮なイワシの刺し身を定食で、夜はイワシをさまざまな調理方法でお酒とともに楽しめる。

丁寧に調理される入梅イワシ。この日は千葉県銚子産と鳥取県境港産が入荷していた(三尾郁恵撮影)
丁寧に調理される入梅イワシ。この日は千葉県銚子産と鳥取県境港産が入荷していた(三尾郁恵撮影)

同店の2代目、金井佑介さん(36)は「その時々で少しでもおいしいイワシを味わってほしい」と数カ所の産地からイワシを仕入れている。

6月半ば。千葉県銚子産と鳥取県境港産のイワシが入荷していた。おすすめの食べ方を尋ねると、「脂のりのいい入梅イワシは、刺し身がおすすめ」と金井さん。供された刺し身は外側に白い層がはっきり見えるほど脂がのっていた。生姜醬油(しょうがじょうゆ)をつけてほおばると、脂の甘味とうまみが口いっぱいに広がり、あっという間に溶けてなくなった。金井さんは「白い層が見えるくらいに脂がのってこそ入梅イワシ」と笑みを浮かべた。

刺し身以外でも味わってみたくなり、開いた身を醬油で軽く洗って焼き上げるという「白焼き」を頼んだ。醬油で洗うことで青魚の臭みが消されたのか、イワシのうまみを存分に味わうことができた。

焼いても、煮ても、揚げてもおいしいイワシ。「骨も煮れば食べられるし、揚げて骨せんべいにもなる。捨てるところがない」と金井さん。

銚子漁港でのマイワシの水揚げ(千葉県銚子市提供)
銚子漁港でのマイワシの水揚げ(千葉県銚子市提供)

そんなイワシの全国有数の産地として知られるのが千葉県銚子市の銚子漁港。船からクレーンで引き上げられる網の中にはイワシがぎっちりとつまっていた。

銚子漁港の沖合では南からの黒潮と北からの親潮がぶつかる上に、利根川からの淡水も加わって、年間を通じてプランクトンが豊富に発生する好漁場となっている。昨年のマイワシの水揚げ量は約15万8000トン。金額にすると約75億5000万円にのぼる。

銚子市漁業協同組合の担当者は「今年は豊漁。脂のりのよいマイワシが増えてきている」と話す。銚子市内の飲食店では、マイワシ尽くしの料理を味わえる「入梅いわし祭」も7月末まで開催されている。

飲食店や旅先で味わうのもよいが、入梅イワシはスーパーの店頭にも並んでおり、家庭でも楽しむことができる。マイワシには血管障害の予防やアレルギー反応の抑制に効果があるといわれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)も豊富に含まれている。

毎日多くのイワシを扱う金井さんは、おいしいイワシの特徴を「目が濁らずに澄んでいて、頭が小さく、背中やおなかが大きく丸みを帯びているもの」と話す。

気候変動の影響で季節を感じにくくなった昨今。旬の魚を味わって季節を感じてみてはいかがだろうか。(長橋和之)

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