日本企業が失った、佐々木朗希のような「じっくり育成法」 どうしたら取り戻せるか

企業はこうした状況の中で、“Z世代”でもある22年の新卒社員を迎え入れている。しかも彼らの多くは、大学生活の大半をコロナ禍に過ごしている。大学3年になった直後の20年4月初旬に緊急事態宣言が発出されて生活は一変し、大学から閉め出され、講義はオンラインに切り替わった。さらにリモート就活を強いられ、インターンシップや会社説明会・選考もオンラインになった。リアルのコミュニケーションの経験が例年になく少ない。

自宅に閉じこもる自粛生活を余儀なくされたことで、リアルのコミュニケーションが極端に減り、社会人のイメージが描けないという先行き不透明感を抱え、将来に対する不安感や危機感を敏感に感じ取っている人が多い。前回の記事で触れたように“配属ガチャ”や“上司ガチャ”を極度に警戒している傾向が強く、会社への依存度が低く、自己の防衛意識が強いという特徴を持っている。

最近の新人の特徴について、ゼネコンの人事担当者は「社員アンケート調査を実施したところ、最近の新人は『40代以上の人と話をするのが怖い』ということが分かった。自分の父親に近い年代の人だと、話がかみ合わないし、丁寧に聞いてくれないので戸惑ったり、怖いと感じるようだ。特に現場に配属されると、職人気質の人が多く、職場がどうしても体育会的な雰囲気になる。打たれ弱い新人は、年配の社員と接するのを怖がる傾向がある」と語る。

新人が話しやすい場を作ることが大切(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)
新人が話しやすい場を作ることが大切(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

そうした新人にどのように対応すべきなのか。

コミュニケーション方法や人選の工夫

前出の倉庫業の人事担当者は「上司や先輩は新人から話をさせるように仕向けることが大事。同じコミュニケーションでも部下と仲良くやろうと、上司が話をリードしようとすると、新人は口を閉ざしてしまい、決して本音は話さないだろう。新人の話を聞きながら上司は観察するという形のコミュニケーションがよい」と語る。

また前出の教育研修会社の幹部は「説明能力に長けた指導役を配置すべき」と語る。「仕事を任せるときに、何のためにやるのかという目的をしっかり理解させること、そのうえで成し遂げた結果が何につながるかという先を見せるなどちゃんと伝えることが大事だ。やらせてから分からせるというアプローチはおそらくうまくいかない。本人が理解しない状態で仕事を任せ、カベにぶつかると『どうして自分がこの仕事をやらないといけないのか、このまま続けて自分の力になるのか』という思考に陥りがちだ」

前出のゼネコンの人事担当者も同様に、育成担当者の人選には気を遣っていると言う。

「最大の特徴は聞き上手であること。じっくり話を聞いたうえで、今の仕事が本人のキャリアのために必要であることを丁寧に説明し、目指すべきゴールを設定してあげる。『今はムダな仕事だと思っているかもしれないがいずれきっと役に立つから』とか『今はつらいかもしれないが、だから君にやらせるんだ』と言って、本人と信頼関係を築き、やる気をかきたてるのがうまい人を選んでいる」

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