エネルギー安全保障 原子力発電活用が不可欠 ウクライナ危機 「再稼働容認」上昇

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、エネルギー安全保障の強化が求められている(写真左上・右上:ロイター、下:AP)
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、エネルギー安全保障の強化が求められている(写真左上・右上:ロイター、下:AP)

ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰で、ガソリン価格や電気.ガス料金などさまざまな物価が上昇し、暮らしや経済に深刻な影響を及ぼしている。資源を海外からの輸入に頼り、エネルギー自給率が低い日本は特に価格高騰や供給不安の影響を受けやすく、エネルギー安全保障の脆弱(ぜいじゃく)さが改めて浮き彫りになった。エネルギー安全保障を強化し暮らしや経済への影響を緩和するには、発電コストが割安で、電力を安定的に供給できる原子力発電の活用が不可欠だ。産経新聞社が実施したエネルギー問題に関する意識調査でも原子力発電所の再稼働を容認する回答が59.0%を占め、前回の2021年3月調査から2.5ポイント上昇した。

「原子力を最大限活用」へ

「再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障及び脱炭素効果の高い電源を最大限活用」

2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向け、岸田文雄首相の肝煎りで政府が策定作業を進めている「クリーンエネルギー戦略」。5月に公表された中間整理には、こう明記された。

昨年10月に政府が決定した「第6次エネルギー基本計画」では、再エネについて「主力電源として最大限の導入に取り組む」とする一方で、原子力発電については「可能な限り依存度を低減する」としていた。ウクライナ危機を受け原子力活用へと大きく舵を切ったといえる。

自民党の原子力規制特別委員会(鈴木淳司委員長)も先月、原子力発電所の再稼働を進めるため、政府の原子力規制委員会による安全審査の効率化を求める提言をまとめた。鈴木委員長は「規制委の発足から10年がたつにもかかわらず、いまだに再稼働は10基しかないのが現実だ。強い危機感を持っている」と、審査のスピードアップの必要性を強調した。

エネルギー価格高騰 自給率引き上げ急務

原子力活用の動きが強まっているのは、ウクライナ危機に加え、円安の影響で石油や液化天然ガス(LNG)、石炭などのエネルギー価格が高騰していることが背景にある。電気、ガス、ガソリンから食料品や日用品に至るまであらゆる物価が上昇し、家計が圧迫されるだけでなく、コスト上昇を通じて国内産業の国際競争力の低下も招いている。

発電などに使用するエネルギー源のうちどれだけ自国内で確保できたかを示す「エネルギー自給率」。日本は主要国で最低水準にあり、2020年度は前年度比0.8ポイント低下し11.2%にとどまった。また総発電量に占める火力発電の比率は76.3%と前年度から0.7ポイント上昇した。

自給率が低く、火力発電への依存度が高ければ、それだけ国際情勢の変化によるエネルギー価格高騰の影響を受けやすい。自給率の引き上げは急務だ。

原子力発電は燃料を一度装填(そうてん)すると、発電を長期間行えるため、準国産エネルギーと位置づけられている。総発電に占める割合が増えれば、自給率は上昇する。20年度は新たな再稼働がなかったうえ、定期検査などによる停止の影響もあり、原子力発電の割合は前年度から2.4ポイントも低下し3.9%に留まった。

再稼働が進み、火力発電の割合が減少すれば、燃料費の抑制が期待できる。発電時に地球温暖化の原因であるCO2を排出せず、カーボンニュートラル実現に向けた有効な脱炭素電源でもある。

安定供給・コストなど再エネに課題山積

太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの導入拡大も自給率の上昇につながる。ただ、発電が天候に左右され、その分を火力発電で補う必要があるなど安定供給の面で不安があるほか、再エネで発電した電気の買い取り費用の一部は「賦課金」として電気料金と合わせて徴収されており、導入拡大はさらなる負担増の要因となる。日本は国土が狭く適地がすでに乏しくなってきているなど課題は山積だ。

「再稼働容認」約6割 前回より2.5ポイント上昇

原子力活用を求める声は国民の間でも高まっている。産経新聞社がウクライナ危機を受け今月3~6日にインターネットで実施したエネルギー問題に関する意識調査では、「日本のエネルギー事情を考慮すると、原子力発電所の再稼働はやむを得ないと思うか」との質問に対し、「そう思う」の26.0%と「どちらかといえばそう思う」の33.0%を合わせた容認回答が59.0%を占めた。前回調査では56.5%だった。

ウクライナ危機に伴うエネルギー価格の高騰や供給不安に対しては、「資源を海外からの輸入に頼っている日本は、エネルギー自給率が低く、エネルギー安全保障がぜい弱だ」との考えに「そう思う」51.6%、「どちらかといえばそう思う」36.0%を合わせ、 87.6%が日本のエネルギー安全保障が脆弱との認識を示した。

原子力発電は、エネルギー安全保障の強化に加え、燃料費を抑制する観点からも、最も有効な電源であり、ウクライナ危機への対応には、その活用が不可欠といえる。

再稼働が現実的な選択肢 今こそ議論を

元衆議院議員 杉村太蔵氏

ウクライナ危機がエネルギー価格をはじめとするさまざまな物価の上昇につながったり、供給不安を招いたりするなか、エネルギー安全保障というものが、実は自分たちに非常に身近な問題だと意識されるようになってきたと感じている。

特に、電力の安定供給は国が発展していく上でも、私たちがきちんと暮らしていく上でも、極めて重要な課題だ。そのためには、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めることが、日本にとって現実的なエネルギー政策ではないかと思っている。

確かに、大きな事故を経験し安直な再稼働は避けるべきだと思う一方、大きな事故があったから二度とその科学技術を使わないというのは、人類の進歩や発展を否定することになる。これまでも多くの苦難を乗り越えてきたように、原子力発電も安心・安全を追求し技術を積み重ね、大きな地震や津波が起きても大丈夫なように英知をふり絞っていくべきではないか。

再生可能エネルギーも重要だが、平地が少ない日本の国土を考えると、原子力発電をすべて補うことは非常に難しいと考えている。私の出身地の北海道では緑の大自然を切り開いて太陽光パネルを敷き詰めている。環境のためといって、木を切り倒していることに矛盾も感じている。

ただ、科学の力だけで不安を解消するというのは簡単ではない。だからこそ政治の決断が必要。特に国の根幹であるエネルギー政策は政治が決断しないといけない。岸田政権がこれまでの方針を大きく転換して、原子力発電の最大限活用を掲げたことは重大な政治決断で、高く評価している。

安全審査の効率化も非常に重要なポイントだ。いち消費者としてどうしてそんなに時間がかかるのかというが率直な疑問だ。

また、政府が原子力発電所の新増設に踏み込んでいない点も残念だ。

原子力発電の活用について、感情論ではなく、冷静かつ現実的な議論をしていくことが大切だ。ウクライナ危機、物価上昇、電力需給の逼迫(ひっぱく)に加え、地球温暖化も待ったなしだ。今はまさに大いに議論すべきタイミングだと思う。

すぎむら・たいぞう 1979年、北海道旭川市生まれ。2004年筑波大学中退。派遣社員、外資系証券会社勤務を経て、2005年9月衆院選で最年少当選を果たす。現在、テレビのコメンテーターなどメディアで活動する一方、自身の経験を交えた政治・経済をテーマとした講演活動を全国で行う。

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