記者発

国会議員は国の代表か 選挙区の代表か 大阪社会部・江森梓

政府の衆院選挙区画定審議会(区割り審)が、一票の格差を是正する衆院選挙区の「10増10減」の区割り案を岸田文雄首相に勧告した。滋賀や和歌山など定数減となった選挙区からは、「地方の声が届きにくくなる」と不満の声が多く上がった。

一票の格差について議論がされるたびに問題視されるのが地方と都市部の格差だ。選挙区間で一票の重みが大きく異なる現状は是正されるべきだという考え方自体は、決して理不尽なものではない。ただ、それに忠実であろうとすれば、どうしても地方にしわ寄せがいく。人口減少や高齢化など地方が抱える課題は山積している。ある地方議員は「地方こそ、議員を減らしてはいけない」と語気を強める。

定数の増減は、有権者の政治参画への意欲にも大きく関わる。前回参院選では、合区になった徳島・高知選挙区を取材した。徳島県内の有権者は「どうせ投票に行っても何も変わらない」とあきらめたような表情を浮かべていた。合区になったことで、「代表を選ぶ」という当事者意識が希薄になったのかもしれない。同県の投票率は全国で最低の38・59%にとどまった。

一方で今後、人口減少はますます加速し、地方と都市部の格差も広がるだろう。そうした中では、一票の格差の議論を抜きにしても、地方の定数をまったく減らさないというのは非現実的な話だ。引退したある元参院議員は「これだけ世の中のありようが変わっているのだから、議員のあり方を見直してもいいのではないか」と問題提起する。

新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークが普及しつつある。リニア中央新幹線もいずれ開通する。もはや、有権者がどこに住んでいるのかということが、あまり意味をなさなくなる時代が来るという。元参院議員は「国政選挙はそれぞれの地方の代表者を選ぶ選挙だという考え方を変えないと、議員定数削減の議論は進まないだろう」と指摘する。

折しも、22日には参院選が公示された。国防や物価高騰など国の課題を争点に掲げる候補者もいれば、地方特有の課題を前面に出す候補者もいる。国会議員とは国の代表なのか、選挙区の代表なのか。国会議員のあり方について改めて考える必要がある。

【プロフィル】江森梓

平成20年入社。京都総局、大津支局、堺支局などを経て、30年から大阪本社社会部。今年5月から大阪府庁を担当。

会員限定記事会員サービス詳細