主張

世界食料危機 「プーチン飢饉」許されぬ

ロシアによる侵略でウクライナからの穀物輸出が滞り、小麦などの食料価格が世界的に高騰している。国連のグテレス事務総長は「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

ロシア軍は、穀物の保管や輸送を担う倉庫、鉄道などを破壊してきた。ウクライナ最大の輸出拠点である黒海沿岸の港湾も攻撃し、船舶の出入りを阻んでいる。ウクライナのものであるにもかかわらず、占領地の穀物を奪っているという報道もある。

ロシアのプーチン大統領は、世界へ流通させるべき食料を、戦争に勝つための「武器」と心得ているようだ。非道な行為には強い憤りを覚える。

ウクライナとロシアは有数の穀物輸出国で、両国で小麦輸出量は世界の約3割、トウモロコシ輸出量は約2割を占める。両国産穀物への依存度の高い中東、アフリカの国々にとって、事態は深刻だ。国連によると、イエメンでは年末までに人口の6割強にあたる1900万人が飢餓に直面する。

プーチン氏は、食料危機は「新型コロナウイルス感染拡大で始まったもので軍事作戦は無関係だ」などとうそぶいている。新興5カ国(BRICS)関連のビデオ会合では、食料価格の世界的高騰は「対露経済制裁のせい」と米欧に責任を押し付けた。食料供給の条件として対露制裁解除を要求するなど独善的姿勢を改めない。

ウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアはアフリカを人質に取っている」と非難したのはもっともだ。

飢饉(ききん)になりかねない世界的な食料危機はひとえにプーチン氏に責任がある。国際社会は連帯し、手立てを講じなければならない。

ウクライナには2000万トン以上の穀物が滞留しているとされる。陸路による輸出は、隣国のポーランドやルーマニアとの間で鉄道レールの幅が異なるなどの理由から一気には進まない。

黒海から地中海へ抜ける安全な海上輸送ルートを確保しなければならないが、ロシア海軍の存在が立ちはだかっている。

近くドイツで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)などでも食料危機への対応は主要テーマとなる。先進国が先頭に立ち、途上国、貧困国を支援するメカニズムを構築する必要がある。

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