トランプ政権下の判事保守化が呼び水 米最高裁「中絶」判断

トランプ前米大統領(AP)
トランプ前米大統領(AP)

【ワシントン=渡辺浩生】米連邦最高裁が人工中絶の憲法上の権利を無効にした24日の判断は、トランプ前政権下で実現した判事構成の保守化による必然的な帰結だった。早くも南部の州は中絶禁止に動き出している。中絶を女性の権利として擁護するリベラル派との主張の隔たりは埋めようがなく、米社会の分断の固定化も一段と進むだろう。

最高裁判事の保守派の6人のうち、ゴーサッチ、カバノー、バレットの3判事はトランプ前大統領が相次ぎ指名した。そのうちカバノー氏は中道派のケネディ判事の後任、バレット氏はリベラル派のギンズバーグ判事の後任として送り込まれ、保守派優勢が確立した。

特にトランプ氏の強力な支持基盤のキリスト教福音派は中絶禁止を悲願とし、トランプ氏自身も選挙前から公約としてきた。

こうした最高裁の保守化が「ロー対ウェード」無効化の最大の要因だ。前日の23日には拳銃の屋外での携行を厳しく制限するニューヨーク州の銃規制法を違憲とする判決を最高裁は下した。銃規制強化は人工中絶と並んで保守派が抵抗するテーマで、銃乱射事件が相次ぐ中での判決は同様に米社会に衝撃を与えた。同性婚などマイノリティー(少数派)の権利をめぐり是非が問われる可能性もある。

中絶の是非は各州に委ねるとした判断の影響はすぐにも広がりそうだ。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、南部のルイジアナやアラバマなど13州では「ロー対ウェード」無効化に伴い、中絶を実質的に禁じる法律が近く発効する。同様の法律が裁判所に差し止められていた他の数州も発効に向かうという。

バイデン大統領は演説で「米国には悲しい日だが、闘いが終わったわけではない」と述べ、中絶の権利を取り戻すため11月の中間選挙で民主党候補に投票するよう呼びかけた。

一方、昨年1月の連邦議会襲撃事件の関与について下院の特別調査委員会の追及を受けるトランプ氏だが、最高裁の判断を自身の功績とアピール、求心力を再び強める可能性もある。

米最高裁「中絶は合憲」覆す 50年前の判決無効化

 

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