主張

サル痘の流行 警戒怠らず準備を整えよ

世界で2千人以上の感染者が確認された「サル痘」について、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に相当するか検討している。

緊急事態が宣言されれば、一昨年の1月に出された新型コロナウイルス感染症以来となる。

宣言発出の有無にかかわらず、政府は空港検疫の強化や検査と診断態勢の整備に全力を挙げるべきだ。新型コロナで初動が後手に回ったことを忘れてはならない。

サル痘の流行はこれまでも、アフリカ地域では散発的にあった。人から人への感染が、今回ほど多くの国で継続的に報告されたことはない。それが、WHOの危機感になっている。英国やスペインなど欧州を中心に世界42カ国で患者が確認された。韓国でも、帰国者の感染が分かった。日本では今のところ患者の報告はないが、警戒を強めなければいけない。

発熱や頭痛、リンパ節の腫れに続いて顔や手足に発疹が出る。多くは軽症で終わるが、一連の流行で死亡は1例報告されている。

体液や飛沫(ひまつ)などを介して感染する。男性同士の性交渉による感染例が多いことが分かっている。不明の点は多いが、新型コロナのような強い感染力はなさそうだ。いたずらに恐れることなく、準備を整えるべきである。

サル痘に対しては、天然痘ワクチンに約85%の発症予防効果があるとされる。WHOは治療などに当たる医療従事者への接種を推奨している。天然痘ではウイルスにさらされた後の使用でも効果がある。患者と濃厚接触した人への使用が検討されている。

岸田文雄首相は15日の記者会見で、サル痘について、「わが国では相当量の天然痘の国産ワクチンを備蓄している。万一の感染拡大時にも対応するために、十分な量の生産、備蓄を行っている」と述べた。国内利用に万全を期すとともに、生産態勢に余力があれば海外への供与も考えてはどうか。

備蓄している国産ワクチンは、WHOが推奨する新しい世代のワクチンで安全性も高い。米中枢同時テロの後、バイオテロへの備えを急いだ米政府から要請を受け、日本から提供した実績がある。

コロナ対応でワクチンの開発や生産ができず、評価を落とした政府の巻き返しの機会にもなろう。真剣に検討してもらいたい。

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