ロシアによるウクライナ侵攻に関し、バイデン米政権はこの10日間でウクライナに計14億5000万ドル(約1960億円)もの多額の追加軍事支援を発表した。これまでに米国が表明した対ウクライナ軍事支援の総額は約61億ドルに上る。米国の狙いは、ウクライナの敗北を何としても阻止することと、軍事支援の拡大に消極的な欧州の主要な同盟諸国に「道徳的な圧力」をかけることだ。
実際、真剣な支援を実施しているのは英国だけだ。フランスのマクロン大統領は、高性能の自走砲を供与したと大々的に宣伝しているが、その数は計12両に過ぎない。ウクライナが必要としているのは、数百門の火砲と少なくとも2000両の戦闘車両だというのに、全く足りない。
マクロン氏のこうした態度は、先の大統領選で下した極右のマリーヌ・ルペン氏を含め、国内の左右両派に親露派が多いことも無縁でないだろう。
イタリアも多数の戦車を擁しているのに、ドラギ連立政権は、親露的態度をとる連立内の左派政党や、ローマ教皇フランシスコの意向を無視できず、拠出を拒んでいる。
最悪なのはドイツだ。ドイツは、ウクライナが必要とする十分な数の兵器を保有しているというのに、ロシアとの関係を維持したいとの思いを今も完全に捨て切れず、高性能とはいえ、わずか7両の自走榴弾砲などを供与した程度で胸を張っている。私が把握している限り、ドイツには約3600両の戦闘車両が保管されているはずだ。