話の肖像画

落語家・桂宮治(22) まさに青春、二つ目ユニット「成金」

二つ目グループ「成金」メンバーと
二つ目グループ「成金」メンバーと

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《平成25年9月、落語芸術協会の二つ目落語家・講談師ら11人からなるユニット「成金(なりきん)」を結成。「若手落語家ブーム」を牽引(けんいん)した》


落語家のユニットがまだはやっていなかった時期に、春雨や雷太(現・桂伸衛門)と講談師の神田松之丞(現・伯山)が「深夜寄席をやろうよ」と言ってきたので、「面白そうだな」と参加することにしました。年齢も前職もまったく違うやつらが集まって、毎週金曜日の夜、11人のうちの誰かが出る。誰かが真打ちになるまで続けるという勉強会(自主公演)です。

前座は寄席に集まっていますが、二つ目になるとバラバラになってしまう。でも成金に行けば、誰がどんなマクラを振り、どんな落語をやっているのかを常に肌で感じることができました。自分がいまどれくらいの位置にいて、どれくらい頑張れているのかが手に取るように分かったので、目標を持ちやすかった。自分にない部分も盗める、補えるというのも大きかったですね。


《落語専門CDショップ「ミュージック・テイト西新宿店」(東京・新宿)を会場に、活動を開始した》


CD屋の棚をどかして席にして、30人程度しか入らないところが会場でした。最初のころの客数は十何人くらいじゃなかったでしょうか。続けているうちに、それなりに入るようになりました。出る人や番組によって数字の上下があったので、みんな「頑張んなきゃ」と競い合っていました。

毎回、4人でやるのですが、「お疲れさま」とそのまま帰る日もあれば、「ちょっと行く?」と飲みに行く日もありました。お友達サークルみたいにはしたくなかったので、僕は付かず離れずで戦って、みたいな感じ。そのうち、年に1回だけ旅行しようということになり、鬼怒川や熱海にみんなで行きました。いつも僕が、11人分の切符や宿を手配していました。

やっぱり行くと楽しいですね。どこに行っても大部屋を2つ取って泊まり、夜は片方の部屋に集まって飲み会です。全員全裸でUNOをやったり(笑)。あまりにうるさいものだから、いつも夜中の午前0時にホテルマンが部屋に来るんです。「シンデレラが来る」って言っていたのですが、部屋のドアがトントンって鳴って、「すみません、静かにしてください。他のお客さまから…」と。


《香盤(落語家の序列)最上位だった柳亭小痴楽が真打ちに昇進したことを受け、令和元年9月に活動を終了した》


「成金」は一言でいうと、「青春時代」です。みんなでキャッキャやってました。海に入ってビーチボールやって…。

一番上と下だと15歳くらい年齢が離れているのに同級生という感じ。年齢なんか関係ないんですね。自分は大学に行ってなかったから、「大学生ってこんな感じだろうな」と。だからあのメンバーに出会えたのは本当にうれしかった。仲間でもあるけど、ライバルでもある。親友ともまた違う。一般社会の感覚では分からない関係性。それがすごい心地よかったですね。


《今年5月、春風亭昇也と柳雀が昇進し、メンバー全員が真打ちになった》


うちの協会では何年かたてば必ず真打ちになれるので、感慨はあまりないかな。「みんなそれぞれ一生懸命頑張ってきたな」というのと、「ここからが勝負だな」と。真打ちになるのがゴールではない。これから棺桶(かんおけ)というゴールに入るまで、噺家(はなしか)としてどんな生き方をするかという勝負。やっと全員がそのスタートラインに立ったんだと思っています。(聞き手 池田証志)

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