投票行動にも「ルッキズム」?見た目の影響は 進む研究

参院選が公示され、京都市内で行われた演説会に集まった有権者=22日、京都市右京区(渡辺恭晃撮影)
参院選が公示され、京都市内で行われた演説会に集まった有権者=22日、京都市右京区(渡辺恭晃撮影)

行き過ぎた見た目への信奉は、「ルッキズム」(外見至上主義)として社会的に問題視されるようになった。もっとも過去の選挙や政治活動において、「イケメン候補」「美人すぎる議員」が話題を集めたのも事実。今回の参院選を巡っても、ある女性候補を「顔で選んでくれれば一番」と発言した国会議員が批判を浴びた。果たして候補者の見た目は、投票行動にどれだけ影響するのか。こうした現象の研究を進める専門家に話を聞いた。

「過去の国政選挙と比べて、立候補者のしぐさや面魂(つらだましい)といった『非言語情報』が、投票行動に比較的大きな影響を与えるかも」

ベストセラー「人は見た目が9割」(新潮社)の著者で、宝塚大の竹内一郎教授はこう予測する。

なぜ「比較的大きな影響」になりそうなのかといえば、公約の違いが目立たないからだという。新型コロナウイルス禍やウクライナ侵攻、物価高への対策とアピールする政策が似通い「有権者目線では政党ごとの特色が分かりにくい」と指摘する。

公約という「言語」で差が見いだせなくなると、今度は街頭演説やSNS(交流サイト)における見た目の重要度が増す―という見立てだ。

生物の本能として、見た目に一定の影響を受けることは避けられないが、「選挙に求められるのは理性的な判断。重要なのは政策論議にほかならない」(竹内氏)。政治家や報道機関に対しては、有権者が政策の違いを理解できるよう、丁寧な情報発信を心がけるべきだと注文をつけた。

それでは、立候補者の見た目はどれくらい投票結果に影響するのか。因果関係の解明に向けて科学的にアプローチしているのが、拓殖大の浅野正彦教授(実証政治学)だ。

早稲田大の尾野嘉邦教授とともに、平成25年と28年の参院選の立候補者約500人の顔写真をアメリカ人に見せ、「見た目」(魅力度)や、「有能そう」「信頼できそう」といった「印象」を1~5点で評価してもらった。アメリカ人を評価者としたのは、先入観を排除するためという。

さらに顔認証機器による「笑顔度」の測定や当選回数なども加味して選挙結果を分析したところ、顔の魅力度が1ポイント上昇するごとに得票率が約5ポイント増える-という結論が出た。一方で印象や笑顔度については、得票率との相関はみられなかったという。

政治能力とは関係がないとみられる顔の見た目がなぜ投票行動を左右するのか。約3千人の日本人を対象にさらに実験を重ねたところ、顔が魅力的と感じる立候補者に対しては、より詳しく知りたいと情報収集をしたり、選挙に強いと見込んで勝ち馬に乗ろうとしたりする心理が働いていたという。

ただ、新たにコロナ禍やウクライナ侵攻を目の当たりにしたことで、有権者が政治家に求めるものが、政策重視に変化した可能性もある。

浅野教授は「今回の参院選を含めて今後も実験を重ねることで、立候補者の外見と投票結果との詳細な関係性を明らかにしていきたい」と話している。(野々山暢)

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