令和4年を迎えた日本は、新たな変異株「オミクロン株」の猛威にさらされていた。沖縄、山口県の米軍基地周辺で感染者が増加し、政府は1月7日に両県と広島県に「蔓延(まんえん)防止等重点措置」の適用を決定。感染はかつてないスピードで進み、月の半ばには全国の新規感染者数が過去最悪を更新し、重点措置の適用は34都道府県に拡大した。
これまでより感染力の強い変異株「オミクロン株」の脅威が、年明けの日本で一気に表面化した。在日米軍基地の周辺などで、新規感染者数の増加が顕著になってきたのだ。
政府は昨年11月から、外国人の新規入国禁止をはじめとする厳しい水際対策を講じていた。ところが、米軍関係者は海外から直接、軍用機で日本国内の基地に入っていた上、すべての在日米軍施設(区域)で昨年9月以降、米側が出国時検査を行っていなかった。
政府は対策強化を求めていたが、周辺自治体への〝染み出し〟は食い止められない。米軍基地のある沖縄、山口両県では1月6日、1日当たりの感染者数が過去最多を更新した。
両県と、山口県に隣接する広島県は同日、特別措置法に基づく「蔓延防止等重点措置」の適用を政府に要請。政府は翌日、3県に対する重点措置の適用を決定した。昨年9月に全面解除されて以来約3カ月ぶりで、岸田文雄政権発足から初めての適用だった。
岸田首相は7日の対策本部で、第6波に備えて先手を打って拡充してきた態勢について「しっかり機能することが重要だ」と述べ、関係閣僚に警戒感を持って対応するよう指示した。だが、オミクロン株による感染は、過去にない勢いで全国を包み込んでいく。
未曽有の増加ペースに危機感
東京都の新規感染者数は6日、641人に上り、わずか2日前の4倍超に急拡大する。都が同日開いたモニタリング会議では、専門家が「増加ペースは経験したことのない高い水準だ」と危機感をあらわにした。
同じ日、厚生労働省に対策を助言する専門家組織の会合では、同省の集計で全国の8割の都道府県でオミクロン株の感染が確認され、疑い例は全国の新規感染者の46%を占めることが明らかに。日本医師会の中川俊男会長は6日の記者会見で「全国的に『第6波』に突入した」と述べた。
全国の新規感染者数は15日、10日前の約10倍となる2万5742人を記録。19日には4万人台となる。政府は同日、重点措置の対象として、東京や神奈川、愛知など1都12県を追加した。
重点措置の適用範囲は27日、北海道や大阪府、福岡県など18道府県も追加されるが、新規感染者数は右肩上がりのまま。29日には8万4935人に到達。26日時点の自宅療養者は約26万4000人に上り、これまで最も多かった「第5波」のピーク時の2倍に達した。
こうした感染状況の一方で、オミクロン株は重症化率が低いという情報も主に海外から伝えられていた。厚生労働省によると29日、全国の重症者は734人。2000人を超えた第5波のピーク時(昨年9月)に比べると、実際にやや抑えられていた。
峠越す米英、中国はゼロ躍起
日本に先んじて、昨年11月終わりころからオミクロン株が広がった米国と英国では、今年1月中旬に「峠」が見えてきた。
米国でのピークは15日ごろ。新規感染者数(7日間平均)が約80万人を記録、新規入院者数(同)も2万1000人余りとなったが、ここから減少に転じる。東部ニューヨーク州のホークル知事は14日、「峠を越えたと思われる」と語った。英国でも、ジャビド保健相が19日、感染が「後退しつつある」と表明。27日には人口の大部分を占めるイングランドで行動規制のほとんどが解除された。
経済への影響を懸念して厳しい規制を導入せず、「ウイルスとの共生」を選択した米英とは対照的に、北京冬季五輪が2月4日から開かれる中国では、行動規制を徹底して完全な抑え込みを図る「ゼロコロナ」政策が続いていた。
習近平国家主席は4日、新型コロナ対応が「最大の試練だ」と述べ、厳格な対策を指示。だが、行き過ぎた防疫措置で市民に犠牲者も出る。前年12月23日からロックダウン(都市封鎖)が続く陝西(せんせい)省西安市では、PCR検査の陰性証明の期限が過ぎていたとして、妊婦が病院で診察を拒否され、死産となる悲劇も報告された。