『精霊の守り人』や『獣の奏者』『鹿の王』など、数々のファンタジー作品で知られる上橋菜穂子さん。続編ではない作品としては7年ぶりとなる新作長編『香君』(上下巻、文芸春秋)を出版した。植物や昆虫が発する香りを「声」のように感じることができる少女・アイシャが主人公だ。
物語の舞台は架空のウマール帝国。香りで万象を知ることのできる女性「香君」を抱き、「奇跡の稲」と呼ばれるオアレ稲によって繁栄してきた。害虫に強く、効率的に生産できるオアレ稲は統治の基盤だ。しかし、オアレ稲に害虫が発生し、帝国は食料危機に見舞われる。アイシャは、香君であるオリエらとともに、解決のため奔走する。