コインランドリー店舗が急拡大している。一度に多くの洗濯物を洗え家事の負担を軽減できるからだ。新型コロナウイルス禍で衛生意識も高まり利用者が増え、国内店舗数は今年、2万5千店を突破したとみられる。メーカーは家では難しい〝布団の丸洗い〟に目を付け専用機器の機能強化を図るほか、コンビニやガソリンスタンドが集客力向上につなげようとコインランドリーを併設するケースも増えている。
業務用洗濯乾燥機を手掛ける大手メーカー、TOSEI(東京都品川区)によると、国内のコインランドリー店舗はほぼ一貫して増加してきた。以前は家に洗濯機のない単身者の利用が中心だったが、家事に多くの時間を割けない共働き世帯の利用が増えたこともあり、平成9年に1万店を超えた。
その後も順調に拡大し、21年に1万5千店を突破。そこから店舗の増加ペースが徐々に加速し、29年に2万店に到達した。1万5千店から2万店は8年かかったが、2万店から2万5千店までは5年とみられ、さらにペースが上がっている。感染症対策で布団やマットなどを洗濯乾燥する人が増えたことも背景にある。同社で営業を統括する塚本広二執行役員は「ここ5年ほどは都市部でも店舗が増加している」と話す。
同社の推計では現在のコインランドリー市場は1200億~1300億円。布団洗いが定着すれば4千億円にまで膨らむ可能性があるとみている。このため需要を取りこぼさないよう、布団に照準を合わせ、高温スチームを使った新しい乾燥・リフレッシャーを開発した。
水ではなく手軽なスチームでの浄化や、「消臭・防ダニ剤」を噴射する機能を取り入れた敷布団用で、一連の処理を15分で行えるのが売りだ。月内にも販売を始める。塚本氏は「布団を洗う人はまだ少ないが新機器で需要を喚起し、市場全体の拡大につなげたい」と力を込める。
コインランドリーに対しては、コンビニやガソリンスタンドも注目する。コンビニとの相乗効果に期待を寄せる大手のファミリーマートは、30年に併設型の「ファミマランドリー」の出店を始めた。現在までに32店舗を全国展開する。
コインランドリーは雨の日の利用が多い半面、コンビニは雨の日の利用が少ない。コインランドリーでコンビニの弱点をカバーし、集客を安定化させる考えだ。今月下旬にも新たに1店舗を開く計画で、併設の強化を続ける。ファミマでは「アプリを通じてランドリーの予約ができるなど利便を高めている。多様な決済手段への対応なども進め差別化していく」(広報担当)としている。
一方、石油元売り最大手のENEOS(エネオス)ホールディングスは、令和2年からサービスステーション(SS)に併設するコインランドリー「ENEOSランドリー」の出店を始めた。若者の自動車離れや自動車の電動化などで新たな収益源の確保が急務となっており、コインランドリーに目を付けた。
「日々の生活を便利にするため、SSの〝生活プラットフォーム化〟を進めている。需要が伸びているコインランドリーへの期待は大きい」(エネオス広報)という。現在の出店数は全国30店で、今後も拡大していく考えだ。(青山博美)