第208通常国会が15日、閉会した。参院選の公示を22日に控え、安全運転で臨んだ政府与党に野党は攻め手を見いだせず、国会論戦は低調に終わった。最終盤には細田博之衆院議長のセクハラ疑惑などの不祥事も浮上したが、野党の追及は中途半端で不完全燃焼のまま閉幕となった。
「異常なほど、やりたいことが全てできた国会だ」 自民幹部は15日、余裕の表情でこう振り返った。政府が提出した61法案は、26年ぶりに全て成立した。政府が摩擦を避け、目立った対決法案の提出を控えた面があるが、野党の対案も審議して花を持たせる「並行審議」を積極的に取り入れたことも奏功した。
一方、立憲民主党も成果のアピールに躍起になった。
「今国会で議員立法54本を提出した。政策立案型をまさに体現した」。立民の泉健太代表は15日、記者団にそう誇った。立民は法案の約85%に賛成したとして「わが党が反対ばかり、批判ばかりだという政党は噓を振りまいている」とも強調した。
泉氏の念頭にあったのは日本維新の会だ。立民では、最高顧問の菅直人元首相も15日、記者団向けに維新批判の小冊子を配った。野党第1党が第2党を攻撃する姿が目立つあたりに、野党分断の現状が浮かび上がる。
各党とも国会論戦には提案型で臨んだが、慎重に言葉を選ぶ岸田文雄首相の答弁を崩すことはできなかった。「検討」を連発する首相を「検討使」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と皮肉ったり、立民が首相の「しっかり」という答弁の回数が1805回にのぼったとの集計を示したりする場面もあった。維新の馬場伸幸共同代表は記者会見で「岸田内閣が重要課題に方針を決定して実行することは見られなかった」と振り返った。
終盤には細田氏の疑惑に加え、吉川赳衆院議員=自民離党=が18歳の女子学生に飲酒させるなどした疑惑も週刊誌報道で浮上。しかし、立民が提出した細田議長と内閣の不信任決議案はあっさり否決され、国民民主や維新が同調しないなど野党の足並みも乱れた。
立民は15日、吉川氏の議員辞職勧告決議案を提出したが、自民の反対で本会議採決に至らなかった。
国会議員に支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の見直しもうやむやに終わった。各党は使途公開を実現する法改正について「今国会中に結論を得る」と合意していたが、まとめる立場の自民には慎重論が多く、高木毅国対委員長が14日に先送りを表明した。
政府与党は追及を逃げ切ったといえるが、参院選に向けた情勢は盤石と言い切れない。共同通信が11~13日に実施した世論調査で、内閣支持率は56・9%と5月の前回調査から4・6ポイント下落した。物価高が要因の一つとみられ、与党は不安も抱えて選挙戦に突入する。(千葉倫之、今仲信博)