黒田総裁発言、根拠の調査とずれ 回答を切取り紹介

参院財政金融委に出席した日銀の黒田東彦総裁=7日
参院財政金融委に出席した日銀の黒田東彦総裁=7日

日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言し撤回した問題は、根拠とした東大大学院の渡辺努教授らの調査から一部を切り取って紹介したことが発端となった。持論の「強制貯蓄」を補強し、国民が値上げを乗り切れると前向きな見方を打ち出したことが反発を買った可能性がある。

同調査は5カ国で実施。日本では約8300人が協力した。黒田総裁が焦点を当てた設問は、「あなたがいつも行っているスーパーでいつも買っている商品の値段が10%以上上がったとします。どうしますか」との内容だ。

昨年8月の前回調査では、「何も変わらない」との回答が約4割にとどまったが、今年4月実施した調査では5割以上となったため、調査は「欧米と同じく値上げを受け入れる回答が過半となった」とした。

ただ、「その商品をその店で買い続ける。ただし、買う量を減らしたり、買う頻度を落としたりして節約する」との項目に「当てはまる」と答えた割合が、前回の5割強から6割超になり最も高かった。

黒田総裁は、新型コロナウイルス禍により「行動制限下で蓄積した『強制貯蓄』が家計の値上げ許容度の改善につながっている可能性がある」との見解も示した。ただ、貯蓄増加が将来不安のためなのかなど、その解釈は割れる。

また、渡辺教授らは「家計の値上げ耐性が高まった」と表現しており、黒田総裁が〝日銀用語〟だとして使った「許容度」という言葉も使っていない。

黒田総裁は、8日に発言を撤回した際、「苦渋の選択としてやむを得ず(値上げを)受け入れているという意味だ」と釈明した。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは講演内容自体に問題はないとしながら、物価高に困った庶民にとり「日銀が不満のはけ口にされた」とも指摘する。(米沢文)

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