コロナ その時、

(42)2021年10月1日~ 南アに「オミクロン株」出現

新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が収束し、日本は令和3年の秋、社会経済活動の正常化へ向けかじを切った。10月に岸田文雄内閣が発足し、衆院選で与党が勝利。ちまたでは「今年は忘年会を」との声も聞かれ始めた。だが、南アフリカで新たな変異株「オミクロン株」が出現。ポストコロナ機運に暗雲がたれ込める。

「コロナとの闘いで、できるだけ通常に近い社会経済活動を取り戻す」

令和3年10月4日、第100代首相に就任した岸田文雄首相は、就任記者会見でこう述べた。

計27都道府県に適用された緊急事態宣言と蔓延(まんえん)防止等重点措置が9月末で全面解除され、政府は感染リスクを引き下げながら社会経済活動を正常化する「出口戦略」の模索を始めた。

課題は山積みだった。医療体制の強化をはじめ、人口の6割が2回接種を終えたワクチン接種のさらなる促進、治療薬の確保、水際対策、行動制限の緩和…。

岸田首相は10月15日、コロナ対策の「全体像の骨格」を発表。入院患者の受け入れ体制を1.2倍にするほか、国の権限により公立病院などで緊急病床を確保することなどを盛り込んだ。衆院選は31日に投開票され、自民党が絶対安定多数(261議席)を確保し政権基盤を安定させた。

実態に合わせ指標見直し

「日常」を取り戻すための焦点の一つは、緊急事態宣言などの発令、解除の基準となる感染状況を評価するための指標の見直しだった。ワクチン接種の進展や軽症・中等症患者向けの治療薬の登場により、重症化する人の割合が減り、それまでの基準は実態にそぐわなくなっていたためだ。

11月8日、政府の新型コロナ感染症対策分科会は新たな指標を策定。新規感染者数などに基づく分類を見直し、医療体制の逼迫(ひっぱく)度合いを重視する指標へと切り替えた。

政府は同日、水際対策も大幅に緩和。令和2年末から原則として認めていなかった外国人のビジネス関係者や留学生らの新規入国を条件つきで容認した。

22日には1日の新規感染者数が全国で22人となり、この年最少を記録した。

復活した「対面」の会合

行動制限の緩和も進んだ。10月25日には各都府県が飲食店に要請していた営業時間短縮を解除。11月1日には、27都道府県で大規模イベントに求めていた観客数の「上限1万人」が撤廃された。

毎年11月の声を聞くと、会社の「幹事さん」たちは忘年会の予約を始める。東京商工リサーチの10月の調査では、7割超の企業がこの冬の忘年会を開催しないと回答していたが、東京・新橋の繁華街には客足が戻り始めていた。居酒屋の店長は「忘年会の予約も入り始めている」と喜んだ。前年はオンライン忘年会だった都内の外資系IT企業も対面での開催を決めた。11月20日に始まった慶応大の学園祭「三田祭」も、参加者の上限を5000人として2年ぶりに対面で開催した。

政府は26日、令和3年度補正予算案を決定。18歳以下の子供への10万円相当の給付など生活支援を掲げ、一般会計の歳出は補正予算として過去最大の35兆9895億円を計上した。

国内の「緩和」ムードと前後して、11月24日、南アフリカが世界保健機関(WHO)へ新たな変異株を報告した。WHOは26日、新変異株をデルタ株などと並び最も警戒レベルの高い変異株に指定し、「オミクロン株」と命名。感染拡大の速度が速い可能性があるとした。

変異株の名前には「デルタ株」などギリシャ文字があてられ、順当なら「ニュー」「クサイ」と続くはずだったが、WHOが選んだのは2文字飛ばしたオミクロンだった。欧米メディアは「クサイ」が中国の習近平国家主席の姓である「習」の英語表記「XI」と同じであることから、WHOが中国に忖度(そんたく)して飛ばしたと指摘した。

オミクロン株は欧州で相次ぎ感染を確認、世界各国は水際対策を強化した。日本政府も29日、緩めたばかりの外国人の新規入国を翌日から原則停止に。しかし翌30日、成田経由で28日に入国したナミビア人の30代男性外交官のオミクロン株感染が確認された。

コロナ禍と主な出来事を記録する連載「コロナ その時、」。感染流行の「第5波」が収束し、社会経済活動と感染症対策の両立への模索が始まった令和3年10月から、検証を再開する。

(41)2021年9月1日~ 緊急事態全面解除、迎えた政治の季節

(43)2021年12月1日~ 年末、オミクロンの脅威国内に

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