「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

「落合氏説」が幻になった阪神の次期監督 球団首脳が静観する真意

矢野監督の途中解任を否定した阪神の藤原崇起オーナー。来季監督をめぐり、球団首脳は静観の姿勢を貫いている=2021年12月、大阪市北区(水島啓輔)
矢野監督の途中解任を否定した阪神の藤原崇起オーナー。来季監督をめぐり、球団首脳は静観の姿勢を貫いている=2021年12月、大阪市北区(水島啓輔)

破竹の5連勝で矢野燿大(あきひろ)監督(53)のシーズン途中の退任は100%消えました。一方で来季新監督構想は全く進まず、球団案も見えてきませんが、これこそ「阪神球団首脳のシナリオ通り」という怪情報が流れています。阪神は交流戦で奮闘。59試合消化時点で25勝33敗1分の借金8と盛り返しています。藤原崇起(たかおき)オーナー(70)は今季限りでの退任を表明している指揮官のシーズン途中での解任を全否定していましたが、反攻の兆しが見えてきたことで途中交代の可能性は0%に-。そして、注目の来季監督について電鉄本社-球団首脳ともに〝静観〟を続けています。現時点で言えるのは「落合博満新監督説」は幻の彼方ですね。

交流戦Vも視界に

怒濤(どとう)の5連勝です。甲子園球場に連日、4万人超の大観衆を集めた新庄剛志監督率いる日本ハムとの対戦では3連勝を飾り、先の西武戦(甲子園球場)から5連勝! 交流戦に入り、4カード終了時点で8勝4敗。なんとなんと交流戦優勝を狙える2位(ヤクルトが9勝3敗でトップ)につけているのです。阪神時代の本拠地に凱旋(がいせん)してきたBIGBOSSも「阪神は強い。これをきっかけにしてほしい。タイガースが勝って、プロ野球を盛り上げてもらわないといけないと思う」と称賛していました。

3月25日の開幕ヤクルト戦(京セラ)で8対1のリードを大逆転されてから、悪夢の開幕9連敗。その後もチームは立て直せず、シーズン17試合消化時点で1勝15敗1分という歴史的な惨敗ペースから、徐々に挽回しました。5月は11勝13敗でしたが、同14日のDeNA戦(甲子園球場)からの20試合は13勝7敗。暗転から一気にムードは変わってきましたね。

表面化せぬ次期監督構想

原動力は投手陣の安定でしょう。交流戦でのチーム防御率2・27、29失点は12球団で最高の成績です。59試合消化時点でのチーム防御率2・78も好成績です。青柳を中心とする先発陣が責任を果たし、中継ぎからセットアッパーの湯浅、抑えの岩崎につなぐ継投策も決まり、チームの戦い方は安定してきました。

そして、結果が全ての世界において、5月中旬以降の上昇ムードは矢野体制の安定をもたらします。

開幕9連敗を喫した直後の4月4日、阪神電鉄本社会長でもある藤原オーナーは、シーズン開幕前に今季限りでの退任を表明していた指揮官の途中解任を否定しています。シーズン最後まで託すのか? と問われたオーナーは「それは当然の話です。組織というのはいつもいいわけやないんですよ。波がある。タイガースも今ここは辛抱のとき。ただ辛抱しているだけやったら何にもならんですけど。一生懸命考えて工夫する。これがやっぱり明るい出口を見つける上で大切だと思いますし、必ずそれを実行してくれると思っています」と語りました。

球団トップは早々に途中解任を全否定していたのですが、チームがそのまま泥沼から脱出できず、借金が膨らむ一方だったとすれば続投→白紙→解任…というのは阪神球団で何度も見てきた伝統的な手法? 悪循環です。オーナーの揺るがぬ信頼に応えた矢野監督がチームを徐々に立て直した結果として、4~5月…とチーム周辺にあった「途中で辞めるのでは…」という噂話はここにきて完全に聞こえなくなってきました。

「交流戦明けとか、球宴明けの段階で監督が退任して代行監督になるのでは…という噂があった。でも、現状のチーム状態を見ればそういった流れにはない。どんな成績に終わっても、矢野監督はシーズン143試合を全うするだろう」と阪神OBも話しています。

そして、矢野監督の途中退任の噂話がプッツリと聞こえなくなったのと並行して? これまた全く聞こえてこない情報があります。それが来季の次期監督構想ですね。電鉄本社や球団幹部の周辺をいくら、どう取材しても「次期監督構想」にはぶち当たりませんね。

お前、ちょっと取材が甘いんやろ! とお叱りを受けるかもしれませんが、実際に本社や球団幹部はほとんど、いや全く次期監督についての動きを見せていません。

球団の「シナリオ通り」

「普通のシーズンなら、グラウンドで今の監督が采配を振るっているのだから本社や球団が次に向かって動くのは失礼になる。陰で動いても、すぐに噂話になるから、動けない。しかしね、今年はそういった現場に対する遠慮や配慮も最低限でいいはずだ。すでに矢野監督はシーズン前に退任を表明している。もう来年はいないのだから、たとえ次期監督へのアプローチが表面化しても構わないはずだ。それなのに、本社や球団の動きは信じられないぐらいに鈍いんだ」とはチーム関係者の話です。

例えば、よく週刊誌やネット記事で散見される元中日監督の落合博満氏の「阪神監督就任説」ですが、本当にあれほどの超大物を招聘(しょうへい)するのであれば、もう球団首脳は水面下で接触し、チーム再建案をご拝聴しなければなりません。現有戦力のどこを斬って、どこを残すのか。コーチングスタッフはどのように考えているのか。連れて来たいコーチは誰で、現在のコーチ陣の中では誰を残し、誰を斬るのか…。ドラフトは即戦力重視なのか、将来性なのか。こうしたチームの戦力編成をまるで積み木を積み上げるように話し合い、作業していかなければなりませんね。

シーズン終了後に就任要請を行い、わずかな日数ですべてを終えるのは無理ですね。しかも、外部の大物監督を招聘する場合、チーム編成はご意向に沿う形となります。事前に綿密なすり合わせが必要ですね。現状の本社や球団首脳の動きの鈍さを見れば見るほど、外部からの大物監督の招聘案は考えられません。ましてや落合氏は阪神OBではありません。呼んでこれる人脈も見えません。

そして、現状の阪神球団の動きの鈍さこそが、実は「球団首脳のシナリオ通りだ」…という怪情報があるのです。それが、何であるのか…はまだ書かないでおきましょう。でも、球団首脳の現状の言動を見れば、来季監督についての「阪神の方向性」はとっくに定まっていると見ていいでしょうね。

CS圏内に浮上の望みも

来週の15日には阪急阪神ホールディングスの定時株主総会が開催されます。ここに来ての上昇ムードで阪神タイガースについての株主の檄(げき)、批判、注文はある程度、抑えられるかもしれません。まあ、何を批判されても阪神側はぬかに釘(くぎ)、暖簾(のれん)に腕押し…でやり過ごすのかもしれませんが…。

まだシーズンは84試合も残っています。5位のDeNAとは1ゲーム差、4位の中日とも3ゲーム差です。もっと言うなら3位の広島とも4ゲーム差ですね。クライマックスシリーズ圏内に突っ込める可能性は十分にあります。阪神本社や球団首脳はチームの浮沈を息をひそめて見定めていますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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