スポーツ茶論

MLB 観客2488人の衝撃 津田俊樹

5月2日に行われたアスレチックス対レイズ戦(AP)
5月2日に行われたアスレチックス対レイズ戦(AP)

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が5月14日、カリフォルニア州のオークランドで行われたアスレチックス戦でメジャー通算100号本塁打を達成した。テレビ中継が打球の行方とともに空席が目立つスタンドを映し出す。土曜日、新型コロナウイルス感染拡大防止による入場制限が解除されたのに、一体、どうしたことか。

この日はダブルヘッダーで、第1試合の観客数は1万2719人、大谷選手が本塁打を放った第2試合は7737人。敵地のファンにも「ショータイム」を楽しんでもらいたかったが、画面を通じて閑散としたスタンドを見ながら、寂寥(せきりょう)感にさいなまれた。

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アスレチックスは今、危機にひんしている。5月2日のタンパベイ・レイズ戦の観客数が過去40年間最少の2488人だった。今季の1試合平均は8421人(5月上旬現在)、パンデミック前の2019年の2万521人を大きく下回る。

米紙ニューヨーク・タイムズは「野球界で最も孤独なチーム」という記事を掲載、レイズのブレット・フィリップス外野手の「あまりに静まり返っているから針が落ちる音さえ聞こえた。それはジョークだけど、最後まで残ってくれた観客には『きみたちに感謝する』と声をかけたよ」というコメントを紹介した。

アスレチックスといえば、1997年にゼネラル・マネジャー(GM)に就任したビリー・ビーン氏がそれまで見過ごされてきた出塁率や長打率などをもとに采配を数値化する「セイバーメトリクス」を採用。評価されていなかった年俸の安い選手を積極的に起用するよう監督、コーチに進言、ヤンキース、レッドソックスなどと覇を競うチームを作り上げた。

金満球団に立ち向かうビーンGMは一躍、時の人になり、「マネーボール」と銘打たれた本が映画化されるなどもてはやされた。だが、他のチームもデータ分析専門の優秀な人材を集め、より高度な機器を導入。資金力の乏しいアスレチックスは次第に輝きを失っていく。

また、オークランド市の再開発と絡み、ラスベガス移転が検討され、今シーズン前には生え抜きで中軸のマット・チャップマン三塁手とマット・オルソン外野手を放出した。アメリカン・リーグ西地区の最下位に沈み、地元ファンにそっぽを向かれている。

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翻って日本球界をみると、昨シーズンの覇者、ヤクルトの主催ゲーム観客数(地方も含む)の1試合平均は1万7321人で、今季も首位に立ちながらコロナ禍前の2019年より1万616人減。話題豊富な新庄剛志監督率いる日本ハムは1万5030人で3年前より1万2338人少なく、ビッグボスのパフォーマンスは観客動員に貢献できていない。

踏ん張っているのはロッテ。今季2万2187人に対し、19年は2万3463人で、いうまでもなく完全試合を達成した「佐々木朗希効果」である(22年の観客数は5月31日現在)。

チケット販売の大幅な減収が球団経営に重くのしかかる。6月に入って回復傾向になりつつあるとはいえ、「観客2488人」を対岸の火事にすませてはならない。

「スポーツはファンがいるからこそ盛り上がる。だから、彼らが最も重要なんだ」(レイズのフィリップス外野手)

球場に観客を呼び戻すために何をすべきか、答えはシンプルである。一人一人の選手が闘志あふれる熱いプレーをみせることに尽きる。

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