百貨店、高額商品の売れ行き好調 売り場拡充も

百貨店で高級ブランドや時計、宝飾品といった高額商品の売り上げが伸びている。新型コロナウイルス禍前の水準を超える店舗や、売り場を拡充する動きがある。感染状況が落ち着く中、外出機会の増加から購買意欲がさらに高まるとして、業界は売り上げ全体の回復に期待している。

日本百貨店協会が公表した4月の全国百貨店売上高によると、高級ブランドを含めたバッグや靴などの「身のまわり品」は前年同月比34・0%増。時計を含む「美術・宝飾・貴金属」は28・1%増で、コロナ禍前の平成31年4月比と比べても2割弱増だった。

J・フロントリテイリング傘下の松坂屋名古屋店は7月、時計売り場を約2倍に広げる。同じく傘下の大丸札幌店や大丸神戸店でも時計や宝飾品売り場をすでに拡充している。

高額商品の好調はコロナ禍で海外旅行がしづらくなり、富裕層が国内消費にシフトしたことが指摘されているが、根底には中間商品が振るわない消費の二極化がある。同社の担当者は「少し前はセール品も売れたが、今は高くても気に入ったものを選ぶ。コロナ禍前から(高額商品は)好調だった」と話す。

三越伊勢丹ホールディングスによると、傘下の伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店の5月の売上高で高額商品はコロナ禍前の水準を上回った。伊勢丹新宿本店は令和元年に高額商品を中心とする改装をしたことが寄与した。

セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武ではインターネットの交流サイト(SNS)をみて高額商品を購入する20~30代など若い世代が増加傾向だという。担当者は「富裕層以外でも使うところにはお金を使う『こだわり消費』が増えている」とみる。

大手百貨店関係者は「百貨店の苦境が続く中、昔ながらの大衆向けではなく富裕層シフトが生き残りを分ける」と明かした。(飯嶋彩希)

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