「隠れカジノ大国ニッポン」 ネットギャンブルの落とし穴

公営ギャンブル以外の賭博が禁じられている中で、スマートフォンなどから金銭を賭ける「オンラインカジノ」へのアクセスが増えている。新型コロナウイルス禍の自粛生活の影響や、24時間遊べる手軽さが背景にあるとみられ、日本はすでに「隠れカジノ大国」と分析する専門家もいる。ギャンブルを合法とする海外で運営され、捜査が困難だとして事実上野放しにされている現状も無視できない。

日本からのアクセス数は1年で5倍に

スマートフォンからオンラインカジノの比較サイトを閲覧すると、こんな言葉が躍る。《日本人気ナンバーワン》《初回入金サービスも》。安心安全をうたうもの、無料プレーをアピールするものもあり、サイトの盛況ぶりがうかがえる。

日本では近年、オンラインカジノの利用者が増加。デジタル分析支援会社「シミラーウェブジャパン」(東京)の調査では、日本からの主要オンラインカジノへのアクセス数は、2019年4月は月間約1430万回だったのに対し、20年1月は5倍以上の同約7850万回に達した。

アクセス数はその後増減を繰り返し、今年4月の月間アクセス数は2580万回。うち約7割がスマホなどのモバイル端末からのアクセスだった。

インターネット犯罪に詳しい神戸大大学院工学研究科の森井昌克教授(情報通信工学)は、国内には延べ100万~200万人のオンラインカジノユーザーがいると推測し「(利用者を)国別で見ると、主要サイトで日本はトップ5に入っている」。日本はすでに、隠れた「カジノ大国」と化しているという。

「理性働かなくなる」

1日で1300万円を使ってしまった―。公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)には、オンラインカジノに絡む悲痛な声が届くようになった。

「相談件数は去年より倍くらいに増えた」と話すのは同会の田中紀子代表。時期が新型コロナウイルス禍とほぼ重なることから、外出自粛や巣ごもり生活も影響したとみている。

手元のスマホ一つで始められる手軽さは、ある意味で最大の落とし穴といえる。

オンラインカジノでは、24時間いつでもギャンブルに手を染めることが可能だ。「際限がなくなり、寝ずに熱中していれば理性も働かなくなってくる」(田中代表)。決済はクレジットカードがあれば問題なく、電子マネー対応可能とうたうサイトもある。

生活が破綻するユーザーも

オンラインカジノが注目を集めたきっかけは、山口県阿武町で起きた4630万円の誤給付問題だ。電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された男は誤給付された金を「オンラインカジノに使った」と供述。事実関係は今も判然としないが、大金が一瞬で消えるとされるオンラインカジノの怖さを多くの国民が認識した。

政治も動いた。1日、衆院予算委員会の集中審議。野党議員からオンラインカジノを「放置するのか」と迫られた岸田文雄首相は「違法なもので、厳正に取り締まる」と述べた。

ただ取り締まりは現実的なのだろうか。

日本では公営ギャンブル以外の賭博は法律で禁止されている。一方でオンラインカジノは、ギャンブルを合法とする国でライセンスを取得しており、森井氏はこうした事情を踏まえ「海外でカジノ設備を利用するのと同じで摘発は難しい」。日本の業者が間に入っているケースなどを除き、現行法での取り締まりにはハードルがあるという。

「グレーゾーン」ともいえるオンラインカジノだが、日本で金銭を賭けているということに変わりはなく、中には生活が破綻してしまう人もいる。田中代表は、アプリなどを通じて多くの人に浸透している現状を危惧。「一部の海外では合法でも国内では違法となる大麻と異なり、オンラインカジノへの啓発はほとんど進んでいない」と指摘。「若い人を守るため、国は啓発活動を強化する必要がある」と強調した。(藤木祥平)

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