【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は5日、複数地点から多数の短距離弾道ミサイルを連続発射するという軍事的示威に踏み出した。日米韓のミサイル防衛網をかいくぐり、日韓の駐留米軍などを攻撃する「実戦に使える戦術兵器」の能力を誇示した形だ。日韓を標的にした戦術ミサイルに小型化した核弾頭を搭載するための新たな核実験も差し迫っているとみて、日米韓は警戒を一段と高めている。
今回の発射地点は首都平壌に加え、北西部や東部、内陸部などさまざま。飛距離や最高高度もまちまちだった。岸信夫防衛相は5日、「飽和攻撃などに必要な連続発射能力の向上といった狙いがある」とする分析を記者団に示した。
飽和攻撃とは、相手の防御能力を上回る量などで集中的に攻撃を加えることを指す。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(当時)は2017年に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射、「国家核戦力の完成」を宣言したが、仮に核を搭載したミサイルを発射しても日米韓が幾重にも張り巡らせたミサイル防衛網に迎撃される可能性が高かった。