平屋住宅が2割安、1200万円 鹿児島で国産木材加工工場始動

三菱地所が販売する国産材を活用した戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」のモデルハウス内装
三菱地所が販売する国産材を活用した戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」のモデルハウス内装

三菱地所などが鹿児島県内で建設を進めていた木造住宅用の木材加工工場が完成、本格稼働した。国産材を製材し、部材にまで加工して出荷する。一貫体制を構築することで中間コストを抑えて国産材の需要拡大を図る。世界的な木材不足で価格が高騰する「ウッドショック」が続き、国産材が見直されていることに対応した。森林資源の循環利用にもつなげるため、工場運営会社を通じて木造住宅販売も強化する。

森林が面積の約7割を占める鹿児島県湧水町。その豊富な木々の存在に三菱地所が着目し、令和2年8月に同町の高校跡地に工場の建設を始めた。南九州は温暖な気候から森林の生育が比較的早いという。同社は生産した建材を海外に輸出することも視野に入れており、アジア各国に近い立地も進出の決め手となった。

製造棟や丸太の皮むきなど製材前の作業を行う拠点が順次完成し、「鹿児島湧水工場」を今月から本格稼働させた。製材から部材などの商品製造まで一貫して担う木材加工工場は国内で初めてという。

「日本の近代史を切り開いた鹿児島県から革新的なイノベーションを起こしていきたい」。本格稼働を前に5月30日に現地で開かれた工場の完成記念式典で、同社の吉田淳一社長はそう宣言した。

工場内で組み立てられた戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」のユニット。現地でユニットをつなげ、組み立てるだけにすることで建築コストを抑えている
工場内で組み立てられた戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」のユニット。現地でユニットをつなげ、組み立てるだけにすることで建築コストを抑えている

敷地面積約9万平方メートルに及ぶ工場は同町の「MEC Industry(メックインダストリー)」が運営する。三菱地所をはじめ竹中工務店、大豊建設など7社が出資し、2年1月に設立された。工場では南九州の原木を使って製材し、強度が高く、断熱性に優れた「CLT(直交集成板)」と呼ばれる最先端の建材などを生産する。それらを使って事前に工場でつくったユニット(部材)を現場で組み立てるだけでよい状態にして出荷する。

メックインダストリーは工場の運営だけでなく、木造住宅販売も手掛ける。木造戸建て住宅の商品名は「MOKUWELL HOUSE(モクウェルハウス)」。あらかじめ間取りが決められた規格型の平屋住宅で1棟(広さ約100平方メートル)の価格は1200万円程度(税別)だ。一般的な低価格戸建て住宅より2割程度安価で提供できるのは生産性に優れた工場を持つ以外に販売を自社で行う点も大きい。当面、販売は鹿児島と宮崎、熊本の3県に限定する。工期は約1カ月で、初年度は100棟の販売を計画している。

三菱地所が国産材に力を入れるのは脱炭素推進も大きい。長距離運搬が必要な輸入材と違って二酸化炭素(CO2)排出を抑制できる。木材自体が鉄やコンクリートなどに比べて、生産時のCO2排出量が大幅に少ない。それに樹木は成長過程でCO2を吸収し、炭素を貯蔵する。木材を使えば炭素を長く蓄えたままにできるので、大気中のCO2の濃度が上昇するのを抑えるのに役立つ。

山から運ばれてきた原木は太さごとに、機械で自動選別される
山から運ばれてきた原木は太さごとに、機械で自動選別される

また、木材の安定供給を確保するためにも国産材の活用は必須だ。昨年3月ごろから続くウッドショックでは、低価格の輸入材に依存していた国内の建設業界が大打撃を受けた。ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁で、ロシア産木材の輸入が激減していることも、国産材のサプライチェーン(供給網)の強化に拍車を掛けている。

不動産大手では野村不動産も国産材の活用を進める。今年3月、今後5年間で1万立方メートル分の国産木材を活用することを目指し、住宅用建材メーカー、農林水産省の3者で協定を締結。グループ会社の建築物で国産材を活用していく方針だ。住友不動産は静岡県裾野市の保有林をリフォーム住宅の下地材などに使う取り組みを始める。

日本は国土面積の約7割を森林が占める。林野庁によると、2年の木材自給率は41.8%。48年ぶりに40%台を回復したが、有効活用はなお課題だ。森林は手入れも何もしないでいると荒廃が進み、CO2の吸収量が低下したり、土砂災害などのリスクが大きくなったりするという。同庁の担当者は「森林を『伐採して使い、また植える』という循環を拡大させることは、森林の維持に不可欠」といい、民間主導の国産材活用に期待を寄せる。

木造住宅は消費者の間でも人気が高まっている。内閣府が令和元年度に実施した調査によると、「今後、住宅を建てたり買ったりする場合、どのような住宅を選びたいか」という問いに、「木造住宅」と答えた人は全体の73.6%に上った。一方で、「非木造住宅(鉄筋、コンクリートなど)」は23.7%にとどまった。

木造住宅を選ぶ理由としては「ぬくもりを感じる」「気持ちが落ち着く」といったことが挙げられるが、モクウェルハウスを購入した宮崎県小林市の大丸竜他さん(44)は「家に入った瞬間の木の香りが気に入った」と語った。

ただ、産地をめぐっては木材製品を購入する際に意識する人としない人の割合が拮抗(きっこう)。調査で産地についての意向を尋ねた質問に対し、「国産材を使用していること」と答えた人は49.8%、「特に意識しない」は45.3%だった。特に若年層で産地を意識しない傾向が強く、国産材を使うメリットをどう伝えていくかが課題だ。(浅上あゆみ)

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