コロナ禍の認知症 「予防」に関心を 発症まで30年「自分事として」

記憶障害や言語障害、ひいては徘徊(はいかい)や暴言などの症状にもつながることがある認知症。人との交流が発症や症状進行の抑止に効果的とされるが、新型コロナウイルス禍による新たな生活様式は、その〝真逆〟のものだった。今月14日は日本認知症予防学会が定めた「認知症予防の日」。同会理事長で、認知症専門医として現場の実態も知る浦上(うらかみ)克哉(かつや)・鳥取大教授に、心がけるべきポイントなどを聞いた。(中村翔樹)

日本認知症予防学会理事長で鳥取大教授の浦上克哉氏
日本認知症予防学会理事長で鳥取大教授の浦上克哉氏

浦上さんによると、症状の予防や進行抑制には3つのポイントがある。①運動②人とのコミュニケーション③知的活動-だ。

①については、1日30分以上のウオーキングや体操などを推奨。②は面と向かっての会話が最適とし、③は編み物や囲碁など指と脳を使うものを指す。

コロナ禍で、①や②は取り組みにくくなった。③は自宅でもできるが、浦上さんは「外の世界と接点がないまま部屋の中で活動する意欲はわきづらい」。いわば総崩れの状態で、実際、同大の外来診療では患者の症状悪化が顕著だという。

厚生労働省が発表した推計では、65歳以上の認知症患者は令和2年時点で約630万人。これが7年までに約700万人に上ると見込まれている。同年代の5人に1人が患う計算だ。

異臭

「おばあちゃん、このおまんじゅう…」。35年ほど前、鳥取大医学部で医師として歩み始めたばかりのころ。浦上さんは地域の高齢女性宅への訪問診療中、言葉に詰まった。厚意でお茶とともに差し出されたまんじゅうから、明らかな異臭がしたからだ。冷蔵庫の中を見せてもらうと、食品のいくつかが腐っていた。

検査の結果、女性は認知症を発症していたことが確認された。

嗅覚異常と認知症に何らかの関連があるのではないか。地域を継続調査するうち、臭いの判断がつかなくなった高齢者が、ほどなくして認知症を発症する例が複数、確認された。

最初期の〝予兆〟は嗅覚異常-。現在は広く認められている事実に、たどり着いた。

30代にもリスク

調査結果を踏まえ、浦上さんが発症防止の観点から効果的とするのが、アロマセラピー(芳香療法)だ。嗅覚を刺激し、次のステップの記憶障害などへ神経変性が及ばないようにする。

具体的には、レモンとローズマリー・カンファーのブレンド、スイートオレンジと真正ラベンダーのブレンド。集中力を高める前者は朝、鎮静作用のある後者は夜、ディフューザー(芳香拡散器)などで香らせる。化学合成ではなく植物から抽出したオーガニック品が前提で、認知症の中でも多くを占める「アルツハイマー型認知症」に効果が確認されているという。

加齢とともに発症リスクが高まる認知症だが現役世代も無関係ではない。若年性型などをのぞき、発症までに20~30年の時間を要することが一般的だからだ。

浦上さんは「現状、根本的な治療薬がないなか、世界保健機関(WHO)からは3秒に1人が発症しているという報告もある。多くの世代が、自分事としてとらえてほしい」としている。

6月14日はアルツハイマー型認知症の特徴的な構造を発見し、名称の由来となったドイツの医学者、アルツハイマー博士の誕生日。これにちなみ、日本認知症予防学会は同日を「認知症予防の日」と定めた。今月12日、新型コロナ禍で3年ぶりとなる記念式典を東京・丸の内の「ステーションコンファレンス東京」で開催する。オンラインでも参加可能で、応募は5日まで。詳細は同会ホームページ(http://ninchishou.jp/)。

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