岸田文雄首相が提唱した「新しい資本主義」の青写真が、31日公表の経済財政運営指針「骨太の方針」案と新しい資本主義実行計画案で姿を現した。格差是正と所得再分配を重視した当初の印象は影を潜め、改造版「アベノミクス」とでもいうべき成長と投資重視の内容だ。市場は首相の〝変心〟に安堵した半面、公約に掲げた「所得倍増」は遠い。政権が何を目指しているのか、依然として伝わりにくいのが難点といえる。
「課題解決を通じて新たな市場を創る、社会的課題解決と経済成長の二兎を実現する」-。実行計画案は新しい資本主義の基本的思想についてこう明記した。
人やスタートアップ(新興企業)、脱炭素といった計画の重点投資分野は、いずれも国内で需要が発生する。こうした課題の解決を持続可能な成長への投資と捉える流れが定着すれば、企業が収益を海外にばかり投資し、国内の研究開発や給与に回さないという成長の目詰まりを解消できる。