観光業界に期待と不安 訪日客再開に残る課題

政府は新型コロナウイルスの水際対策を緩和し6月1日から入国者数上限を1日当たり2万人に引き上げ、その枠内で10日からはリスクの低いとされる国を対象に、団体ツアーに限って外国人観光客の受け入れを再開する。観光業界は需要回復への大きな一歩と歓迎する。実際に旅行予約が動き出すのは夏以降とみられるが、ツアーの責任を負う旅行会社にとっては、コロナ感染対策と参加者の自由時間確保の両立など運用面の課題は残ったままだ。

「ポジティブに受け止めている」「ありがたい」

旅行業界からは今回の水際対策緩和に歓迎の声が相次ぎ、日本旅行業協会の高橋広行会長(JTB会長)は27日、「段階を追ってのさらなる緩和に期待したい」と要望した。

6月10日から再開されるのは旅行会社が全行程を管理しやすい添乗員付きのパッケージツアーで、検疫措置の分類として感染リスクが最も低い「青」区分の国・地域が対象だ。「青」区分は26日時点で米国や英国、中国、韓国など98の国・地域。円安効果もあり、中国人客らの旺盛な消費に期待する観光業者は多い。

だが、旅行大手の日本旅行の担当者によると、団体ツアーは企画から催行まで時間がかかるため、「すぐに予約が増えるとは予想していない」という。現段階で海外の顧客とやり取りしているのは、夏や秋のツアーが多く、この先、原油高やウクライナ情勢、いまだに残る入国制限の影響などの不確定要素が需要の戻りにどう影響するか懸念されるほか、ツアー参加者の管理面でも課題が残る。

旅行会社や宿泊事業者向けのガイドライン策定に役立てるため、政府が実施している海外旅行会社関係者を対象とした実証ツアーでは、感染対策の順守状況について逐次報告を求めるなどし、参加者からは「自由に買い物ができない」と不満の声も上がっている。訪日客受け入れの本格再開後に、買い物や夜の飲食など自由時間を全て禁じるのは現実的ではなく、旅行会社の関係者も「(個別行動を)防ぐ手立てはない。早く方策をガイドラインで明文化してほしい」と話す。

観光庁の担当者は、詳細はガイドラインに示すとした一方で、「行程が管理できるのであれば、常識的な範囲内で運用してもらうことになるのでは」と説明。基準が明確にされないと現場が混乱する恐れもある。(福田涼太郎)

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