新聞に喝!

ユニクロの中国関係報道を求む 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

4月20日の各紙の朝刊に、一斉にカジュアル衣料品店「ユニクロ」による全面広告が出た。タイトルは「世界から『難民』が一人もいなくなるまで。」というもので、内容はユニクロが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、今までどれだけ難民支援を行ってきたか、今後も活動を行っていくことを主張したものである。

このタイミングで広告が出されたのは、その直前の4月14日に行われた、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの令和4年2月中間連結決算の発表と、その時の柳井正会長兼社長による記者会見とに、関係しているのであろう。

新聞によってこの記事の扱い方は、かなり異なっていた。読売と毎日は簡略で、日経と朝日、それに産経が詳しく報じていた。この3紙は対応の遅れが批判された、ロシア事業に関する問題に言及しているが、柳井氏はロシア事業を停止した判断は、決して遅れていなかったと反論したといい、産経はそれを見出しとして、大きく掲げている。

ロシアのユニクロは、欧州最大の全50店舗で、その4割を占める。3月21日から、店舗の営業と電子商取引を停止したが、売上高に占める割合は、約2%であるという。

朝日によれば、柳井氏は記者会見で「あらゆる戦争に強く反対する」と述べたが、同氏が「公の場でロシアのウクライナ侵攻に関連して発言するのは初めてだ」という。

ところでユニクロと言えば、中国のウイグルの人権問題はどうなっているのか。ロシアのウクライナ侵略は、目の前の戦争であるが、ウイグル人権問題は、ジェノサイドであるから、目に見えなくとも、見逃すことのできない、重大問題であるはずである。14日の記者会見でウイグル人権問題を、柳井氏に質問した新聞はなかったのか。中国関係で報道されたのは、コロナに関する問題だけであった。

5月8日の産経新聞の「日曜経済講座」によれば、アメリカでは、「中国・新疆ウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止する『ウイグル強制労働防止法』」が6月21日に施行されるという。この問題はトランプ政権時代から重要視されて、「昨年1月には衣料品店『ユニクロ』のシャツ輸入が差し止められた」と記されている。

ロシアのウクライナ侵略によって、ロシアの全店舗の営業を停止したユニクロは、中国関係では何をやっているのかいないのか。この広告を堂々と載せた新聞には、それについて明確に報道する責任がある。

【プロフィル】酒井信彦

さかい・のぶひこ 昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂(へんさん)所で、『大日本史料』の編纂に従事。

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