主張

首都直下地震 1都3県は歩調合わせよ

30年以内の発生確率が70%とされる首都直下地震について、東京都は10年ぶりに被害想定を見直し、結果を公表した。

最悪の被害が想定される都心南部直下地震=マグニチュード(M)7・3=では、23区の6割が震度6強以上の揺れとなり、揺れや火災による死者が6148人に上ると推計された。

平成24年に公表された最悪の想定と比較すると、死者と建物被害は36%減少している。この10年で都内の耐震化率が81%から92%に上昇し、耐震化と不燃化が進んだ結果である。ただし、喜んではいられない。

首都直下地震が「いつ起きてもおかしくない」ことを考えれば、10年かけても基本的な対策がまだ途上にあることに、むしろ危機感を持つべきである。

耐震化率100%を達成すれば、揺れによる死者と建物被害はさらに6割減る見込みだ。着実にではなく、可能な限りの早期達成を目指さなければならない。

都が公表した想定に関しては、これが首都直下地震による被害の全容ではない、という点に特に注意しなければならない。

首都直下地震は、南関東の直下で起きる震源やメカニズムの異なるM7級地震の総称である。通勤や通学で都県をまたぐ生活圏に暮らす多くの住民は、居住地と勤務先や学校の状況を同時に知りたいはずだ。

被害想定の新たな全体像は政府の中央防災会議から公表されるとしても、都は神奈川、千葉、埼玉の3県と緊密に連携、協力して首都直下地震対策に取り組まなければならない。被害想定の検討、公表においても、1都3県が歩調を合わせることはできたはずだ。

住民の視点を忘れた「お役所意識」が都の単独発表の背景にあるとしたら、猛省を促さなければならない。

首都直下地震では帰宅困難者、避難所の確保と運営、食料と物資の供給など多くの問題が、人口の多さによって増幅される。また、交通、通信が一定期間マヒ状態に陥ったとしても、政治・経済の中枢機能を維持する必要がある。

地震による国力の低下を防ぐためには、人口と中枢機能の一極集中緩和が不可欠だ。必要性が指摘されながら停滞したままの首都機能分散の議論を前に進めるべきだろう。

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