「プロフェッショナル」義肢装具士 向江雅人さん

海外での仕事を目標にする義肢装具士の向江雅人さん=大阪府大東市
海外での仕事を目標にする義肢装具士の向江雅人さん=大阪府大東市

パラアスリートの活躍で義肢装具を目にする機会が増え、注目されている義肢装具士。病気や事故で四肢の一部を失った人のために義手や義足などの「義肢」、身体の機能の障害を軽減するためにコルセットなどの「装具」を製作し、適合させる専門家だ。

「義肢装具士の力を必要とする人は心身ともに弱って来られる方が多いので、コミュニケーションをとるのに気を遣います。一生懸命向き合って喜んでもらえたときが一番うれしい」

人に喜ばれることが一番

こう話す向江雅人さん(36)だが、義肢装具士を志すようになったのは、実は社会人になってからだった。大学院を修了し、機械メーカーで働いていたが、「人のためになる仕事がしたい」と違う道を模索する中、実家近くに「神戸医療福祉専門学校三田校」(兵庫県三田市)があることを知った。

オープンキャンパスで、カンボジアやタイなど海外で義肢装具士として働いた経験をもつ佐々木伸学科長と出会った。地雷などで足をなくした人たちのために義足を作り続けた学科長の話を聞くうちに、「こういう働き方もあるんだ。いつか自分も海外で仕事がしたい」と入学を決めた。

4年ほど勤めた会社を辞め、平成28年4月に三田校義肢装具士科(4年制)に入学。30歳のときだった。

クラスは若い人が多く、「ケガをして装具士さんにお世話になった」「アニメの筋電義手を見てあこがれた」など動機はさまざま。「こんな年齢で入ったので結構がんばりました。中途半端な気持ちじゃない。週6、7日アルバイトをしながら必死で勉強しました」と振り返る。

授業では医学や解剖学、生理学など基礎知識のほか、義手や義足の採型・製作・仮合わせから適合までの工程に必要な技術を習得。最終学年にはタイの大学に交換留学という形で実習に行き、実際に患者の義足を作るなど貴重な時間を過ごした。

「いつか海外で仕事を」

卒業後は、義肢装具製作会社「川村義肢」(大阪府大東市)に就職。佐々木学科長から「すぐ海外に行かないの?」と聞かれたが、まずは日本で経験を積むことを優先した。

義肢装具はスポーツ用と生活用の2種類にわかれるが、向江さんは府内の3病院で生活をサポートする義肢装具を製作している。不具合があれば原因を突き止め、適合するまで調整を繰り返す。

その中で心に残っている患者がいる。事故で車いす生活を送る男子高校生。背骨が左右に湾曲した状態で身体を安定させるコルセットを依頼された。向江さんにとって初めてのケース。快適に装着できるよう試行錯誤を重ね、実際につけてエックス線を撮ると真っすぐになっていた。

それを本人に見せると、「こんなに違うんや。友達に送ろう」とスマートホンでパチパチと撮り始め、このとき付き添っていた母親が初めて笑った。帰り際、彼から「向江さんにちゃんとしていただいて本当によかった」と言われ、ほっとすると同時に、逆に励まされたという。

患者が何を求めているかを理解し、ニーズに応えるのは簡単なことではないが、がんばればがんばるほど返ってくるものも大きい。「人のために何かしたい。いつか海外へ」という気持ちは今も変わらない。

(上岡由美)

〈義肢装具士になるには〉 養成コースなど専門課程がある大学や専門学校に入学し、卒業後、国家試験に合格すれば資格を習得できる。義肢装具の技術発展は著しく、扱える高度な知識や技術をもった義肢装具士の需要は国内外で増加しつつある。

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