故障車や事故車を運ぶ日本自動車連盟(JAF)の無料ロードサービスを巡る民事訴訟で、商用車両の運搬に使うため、約5年間にわたり不正利用を繰り返したとして、大阪地裁が中古車販売業者らの不法行為を認め、JAF側への約2800万円の支払いを命じた。中にはロードサービスの出動要請が800回を超えた被告もおり、不正は一見して明らかとも思えるが、判決は賠償額の算定にあたりJAF側にも相当な過失があったと認定した。一体どこに問題があったのか-。
訴訟で最大の争点となったのは、そもそも無料ロードサービスを商売目的で使うこと(商用利用)が禁止されていたのか否か。というのも、JAFが平成30年5月施行の利用約款で定めるまで、商用利用の禁止規定は存在していなかったからだ。
JAFのロードサービスは会員と非会員で異なる料金制度となっており、動かなくなった車の牽引(けんいん)は、JAF会員であれば15キロまでは無料、非会員であれば1キロあたり720円(26年改定時)-などと設定されていた。
JAF側が大阪地裁に起こした訴訟で、被告とされたのは大阪府内の中古車ブローカーや中古車販売会社の代表、従業員ら4人。いずれもJAFの個人会員で、商品の中古車をオークション会場に運んだり、修理を頼まれた車を工場まで搬送したりするのに、ロードサービスを使っていた。
訴訟では、約款で禁止された30年5月よりも前の商用利用が、不法行為に当たるかが争われた。
JAF側は、偶発的な事故や故障への対応が目的とホームページ上で記していたことなどを挙げ、「規定がなくても商用利用が禁止されていたことは明らかだ」と主張した。
一方、被告らは「商用を理由に、ロードサービスを拒否されたことはない」と反論、商用利用の禁止を認識する機会はなかったと訴えた。
これに対し5月25日の大阪地裁判決は、JAFが公益目的の法人であること、他の民間業者より料金を安く設定し、利用回数にも制限を設けていないことを踏まえ、ロードサービスを会員同士の「相互扶助の制度」と指摘。商用利用は想定されておらず、制度趣旨に反して許されないと断じた。また被告らは出動要請の際、商用で扱う車両であることを申告しておらず、本来は事業目的で利用できないことを認識していたと判断した。
一方で、判決はJAF側の過失も認定。長年にわたり商用利用の禁止を明文で定めなかった▽受付指令室では被告らの多数回の利用が認識されていた▽現場の作業員から被告の商用利用をうかがわせる報告があったのに、調査や防止のための措置を講じなかった-として「漫然と商用利用させていた」と指摘した。
そしてJAFの非会員がサービスを受けた場合の料金を損害額の基準とした上で、50回を超えた利用分は3割、被告らの不正利用を認識できた28年1月以降の分については、5割を損害額から相殺した。
判決によると、平成30年2月までの約5年間の不正利用は、最も多い被告で816回、最も少ない被告で342回だった。
エンジントラブルや電気系統の故障などを理由に救援を要請し、オークション会場で仕入れた中古車を転売先へ搬送させたり、フェラーリやランボルギーニといった顧客から預かった高級外車を、修理業者へ持ち込ませたりしていた。
判決についてJAFの担当者は「不正利用が認定されたことは評価している」とコメントしている。