深層リポート

千葉発 動き出した洋上風力発電 「オール銚子」で起死回生

名洗港(右下)の沖合で風況などの検証に用いられた東京電力関連会社の大型風車。左は観測塔=22日、千葉県銚子市(小野晋史撮影)
名洗港(右下)の沖合で風況などの検証に用いられた東京電力関連会社の大型風車。左は観測塔=22日、千葉県銚子市(小野晋史撮影)

海上に設置した大型風車で発電する「洋上風力発電」事業が千葉県でいよいよ動き出した。温室効果ガスの排出実質ゼロに向けた再生可能エネルギーの本命として、全国に先駆けて、大消費地の首都圏に近い銚子市沖で令和10年の運転開始を目指す。周辺海域は遠浅で風況も良く、今年4月には県内3カ所目が名乗りを上げた。地元市町は閉塞(へいそく)感を打破する起爆剤として期待し、漁業関係者と協調しながら前に進もうとしている。

高さ250メートルの風車

銚子市沖で事業を展開するのは、三菱商事などの共同事業体「千葉銚子オフショアウィンド」だ。同市南側の沖合に広がる約3950ヘクタールの海域で、高さ約250メートルの大型風車31基を1キロ間隔で建設。最大発電出力は約39万キロワットで、約28万世帯分の電力需要に相当する。生まれた電気は約50キロ離れた東京電力の新佐原変電所(同県香取市)を経て首都圏などに送られる。

着工は6年度末。工事の拠点は茨城県の鹿島港だが、10年9月の運転開始後は、銚子市南部の名洗(なあらい)港を保守管理の拠点とする。発電期間は20年間を当面の目安としている。

政府は再エネ海域利用法に基づき、銚子市沖をはじめ、秋田県沖3カ所、長崎県沖1カ所の計5カ所を洋上風力発電の促進区域に指定。今後さらに増やし、22年までに国内で最大計4500万キロワットの発電を目指す。

5カ所のうち4カ所は海底に固定する着床式で、銚子市沖が着床式で最初に運転が始まる場所。三菱商事エナジーソリューションズの伊原弘雅プロジェクトダイレクターは「私たちが先駆者となるので、他でも機会があれば当然、ここで得た知見を活用していく」と意気込む。

半世紀越しの思い

国主導の巨大プロジェクトである洋上風力発電は、銚子市にとっても起死回生の一手だ。犬吠埼(いぬぼうさき)で知られる同市は11年連続で日本一の水揚げ高を誇る一方、15年連続で路線価が下落、国勢調査で8回連続で人口減少が県内最悪となるなど、低落傾向が目立つ。

1970年代まで同市には、名洗港を国の重要港湾にし、大規模な火力発電所の誘致や、北海道など各地に向かうフェリーの基地にするなどの構想があった。しかし、いずれも夢に終わった。

名洗港を生かせなかったことが、長期的な低迷につながったとの思いは市内で根強く、洋上風力発電に「オール銚子」で取り組む姿勢につながっている。昨年8月には越川信一市長が漁業協同組合や商工会議所のトップと県庁を訪れ、千葉県の熊谷俊人知事に洋上風力発電に関する要望書を手渡した。

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