いきもの語り

国内最高齢のアジアゾウ「アヌーラ」 体調の変化に飼育員やきもき

青草やリンゴを食べ、元気に暮らすアジアゾウの「アヌーラ」=1月、日野市の多摩動物公園(東京動物園協会提供)
青草やリンゴを食べ、元気に暮らすアジアゾウの「アヌーラ」=1月、日野市の多摩動物公園(東京動物園協会提供)

長い鼻を探るように動かし、ゆったりと歩を進める大きな姿。多摩動物公園(日野市)で飼育する雄のアジアゾウ「アヌーラ」だ。年齢は推定69歳で国内最高齢。年齢相応に目や耳は悪くなっているものの、いたって元気な様子だ。

アヌーラの来日は昭和31年にさかのぼる。スリランカで開催された建国2500年を記念した式典に、三笠宮ご夫妻が臨席されたことをきっかけに、同国から寄贈された。

国内で例がないほど高齢

「アヌーラは国内では例がないほど高齢のため参考になる情報が乏しく、飼育は未知数の部分もある」

アジアゾウの飼育を担当する松本干城(たてき)さん(27)はこう話す。これまで国内のアジアゾウで最高齢だったのは井の頭自然文化園(武蔵野市)の、はな子だったが、平成28年に推定69歳で死去。アヌーラは今年、はな子の記録に並んだ。

「アヌーラ」の世話をする飼育員の松本干城さん=9日、日野市の多摩動物公園(東京動物園協会提供)
「アヌーラ」の世話をする飼育員の松本干城さん=9日、日野市の多摩動物公園(東京動物園協会提供)

多摩動物公園では、アヌーラに少しでも健康で長生きしてもらおうと29年、設備を新しくした「新アジアゾウ舎」に移した。ここでは床に厚さ約2メートルの砂を敷き詰めるなど、野生に近い環境を整えている。

健康管理に細心の注意

ただ、アヌーラは白内障で、ほとんど目が見えない。通常、清掃などで他の場所に移動させる場合は職員が声をかけて呼んだり、餌を見せたりして誘導するが、アヌーラには人間や餌が見えない。そのため、リンゴを地面に落とすなど音に振動を合わせることで誘導する。このやり方になじんではきたが、松本さんは「普段と時間が違ったり、取らせようとする行動が違ったりするとうまくいかないこともある」と明かす。

餌となるワラなどの硬さや大きさにも配慮。餌は床に置けば取りやすいが、重い頭をもたげて高い所の物を取る方が運動になり野生にも近いと考え、上からつって与えている。今ではエコーや腸の検査などにより精密な検査ができるよう、足をつなぐことに慣れる練習も行うなど、健康管理には細心の注意を払う。

始まった「同居」生活

約30年ぶりに他のゾウとの「同居」にも成功した。相手は新アジアゾウ舎に令和2年5月、移ってきた雌のアジアゾウ「アマラ」(17歳)だ。アマラがまず入ったのはアヌーラと柵を隔てた隣の部屋。2頭は柵越しに鼻を絡め合うなど、良好な関係に見えた。

野生のゾウは雌を中心とした群れで暮らしており、雌との同居は飼育環境の向上につながる上、アマラの発情期に合わせることで繁殖も期待できることから同年11月、1日1時間程度に限定して同居が始まった。

少しずつ近づけていく予定が、同じ部屋に入った途端、アヌーラに接近するアマラ。もしけんかになれば人間の力で引き離すことはできない。緊張が走ったが、アヌーラは興奮することなく、落ち着いた様子を見せた。「最初、アヌーラは『われ関せず』の態度だったが、徐々に一緒に餌を食べ、仲の良い様子を見せるようになった」という。

繁殖には至らなかったものの、「今後も状況を見ながら検討していきたい」と松本さん。ちょっとした体調の変化にやきもきしながら世話をする日々が続くが、「やっている飼育方法の一つ一つが今後、高齢のゾウを世話する際の前例となっていくので、試行錯誤を重ねて行きたい」と話した。(橋本昌宗)

会員限定記事会員サービス詳細