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「ちむどんどん」の包丁は名人の特注品だった

きっかけはキッチンバサミが切れなくなったことだった。高価ではないがお気に入り。ネットで「ハサミ研ぎ」と検索して出てきた中で、自宅から一番近かった刃物店に預けた。

3日後に取りに行くと、切れ味はすっかり元通りに。というか、最初よりスムーズになっている。かみ合わせが狂っていたのを、たたいて修正してくれたそうだ。まさにプロの技。

老舗の3代目にあたるという店主(78)は、腕がいいだけでなく、刃物について本を書くぐらい博識な上に話し上手。すっかり感心してあれこれ聞いているうちに、店に並んだ商品のひとつに「『ちむどんどん』で比嘉賢三使用の包丁」という説明文がついているのに気づいた。新潟県三条市の包丁鍛治、外山修司さん作の和牛刀で、刀身に「修司作」という銘が入っている。むむ。雑談を取材モードに切り替える。これはどういうことですか?

放送中のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」は主人公の比嘉暢子(のぶこ)(黒島結菜(ゆいな)さん)が料理人を目指す話。かつて料理人だった父親の賢三(大森南朋(なお)さん)から受け継いだ包丁が出てくる。つまり、これと同じものが劇中に登場しているということですね。

店主によると、NHKの人が店に来て「ドラマに使いたいのだが、どんな包丁がいいだろうか」と相談された。設定された時代に使われていて違和感がなく、何より姿、かたちがいいもの。目に留まったのが修司作。三条の問屋を通じて注文したそうだ。

ドラマで登場するものは、銘が「修司作」でなく「比嘉賢三」になっている。つまり特注品。小道具ひとつにそこまで手間暇をかけているとは。すごいなぁ、朝ドラ。

店主は外山さんに直接会ったことはないそうだが「これだけの包丁が作れる人はなかなかいない。名人だと思いますね」と話す。

せっかくなので、ダメ元で外山さんに取材を申し込んでみたら「来てもいいよ」と快諾。新潟に向かうことにした。以下次週。(ライター 篠原知存)

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