朝晴れエッセー

飼い犬に手をかまれる・5月29日

「病院に行った方がいいかな?」

朝の散歩から戻った主人の手には血がにじんでいた。玄関ドアから駐車場に降りる階段の途中で、愛犬に手をかまれたという。

階段は私のお気に入りの場所である。両側に大小のプランターを置いて、あれこれ植物を育てており、花盛りのこの季節は1年の集大成で特に大事にしていた。

愛犬は高齢で最近よろよろしており、プランターにぶつかって、何度かひっくり返して花を駄目にしていた。私は「ぶつかりそうなときは抱っこしてね」と主人に声をかけていたのだ。そして、その日がやってきたのである。

愛犬は、目も耳も鼻も悪くなっていて、急に主人に抱き上げられてパニックをおこしたのだろうと思われた。何度となく抱っこしてきて、かまれたのは今回が初めてであった。主人はだいぶ落ち込んでいたが、年老いた愛犬もふびんでならなかった。

思えば昨年、新社会人となった娘が、小学生のときにわが家に来た愛犬が、共働きの私たちの代わりに、娘の寂しさをどれほど癒やしてくれたことか。また、主人が定年退職後は、最高のパートナーとして、昼夜問わず一言も文句も言わずによくつきあってくれて、本当に感謝している。

主人は受診し傷は治りつつある。今度はこちらが愛犬にお返しする番だ。

角坂博子(60) 千葉県佐倉市

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