サル痘拡大 「極めて異常」WHOがヒト間の感染警告

サル痘ウイルス(米疾病対策センター提供・共同)
サル痘ウイルス(米疾病対策センター提供・共同)

【ロンドン=板東和正】天然痘に症状が似ている「サル痘」の感染が欧米や中東で拡大している。世界保健機関(WHO)はヒトからヒトへの感染を認め、流行地域のアフリカに関わりのない感染者が相次いで確認されているのは「極めて異常」と指摘。子供や免疫力が低下した人が感染すれば重症に陥る恐れがあるとし、各国に感染者の隔離などを呼びかけている。

ロイター通信によると、サル痘の感染は27日時点で英国やフランスなど欧州のほか、北米、オーストラリア、中東のイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)に拡大。アフリカ以外で感染が確認されたのは少なくとも20カ国にのぼり、200人以上が感染している。死者は報告されておらず、日本での感染も確認されていない。

サル痘はこれまで主にアフリカ西部や中部の熱帯雨林地域で流行してきた。そのため、アフリカへの渡航歴がない感染者が相次いでいる事態を受け、WHOは21日の声明で「極めて異常な出来事だ」と指摘。感染者が確認された米国のバイデン大統領も22日、「誰もが心配すべきことだ」と懸念を表明した。

WHOなどによると、サル痘は1958年に実験用のサルから最初に確認された感染症で、発熱や体の痛みのほか、顔や手足に発疹が出る。大半は軽症のまま終わり数週間で治るが、子供や妊婦、免疫力が低下した人が感染すれば重症に陥る恐れがある。

サル痘はウイルスを保有した野生動物に触れることで感染する。感染者との身体的接触のほか、感染者の飛沫(ひまつ)や体液に触れて感染する場合もある。

WHOは欧米などのサル痘の流行を受け、「入手可能な情報では、密接な身体的接触によりヒトからヒトへの感染が起きていることが示されている」と分析。感染者は今後も増加し、感染が確認されていない国にも広がる可能性があると指摘した。感染者の発見や隔離を急ぎ、感染拡大の抑制が急務と強調した。

こうした中、英国やベルギーなどの政府機関は、感染者らに数週間の隔離を指示。サル痘に特化したワクチンはないが、複数の国は天然痘のワクチンを備蓄しており、国民に接種する計画を立てている。天然痘ワクチンはサル痘に対しても、最大85%の効果を発揮するとみられている。

一方、サル痘の感染が欧米などで拡大した要因は不明だ。ただ、英紙フィナンシャル・タイムズなどによると、欧米で若年層が天然痘ワクチンの予防接種を受けておらず、サル痘への免疫力が低いことが理由として考えられる。また、サル痘ウイルスが変異したことで感染力が強まったとの見方もあるという。

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