26日に閉幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、一部識者からウクライナにロシアへの領土割譲を促す発言が出たことに対しウクライナが猛反発している。同国のゼレンスキー大統領は「まやかしの平和」は受け入れることは決してないと強調するが、欧州諸国からは即時停戦や和平交渉入りを求める声も上がるなど、ウクライナへの圧力ともいえる動きが出始めている。
欧米メディアによると、米国のキッシンジャー元国務長官は23日、ダボス会議にオンラインで出席し、「(2月24日の)ロシアの侵攻開始前の状況」を両国の国境とすることが望ましいと発言。ウクライナ側にクリミア半島や東部の親露派支配地域の奪還を事実上あきらめるよう提案した。
これに対しゼレンスキー氏は25日、ロシアへの領土割譲を促す人々は「そこに住む一般市民のことを何も考えていない」と主張。「ロシアの利益を考慮するよう求める人は常にいる」と述べて提案に反発した。
ロイター通信によれば、ロシアに融和的とされるイタリアとハンガリーは、欧州連合(EU)に即時停戦と和平協議入りを促すよう働きかけている。
ウクライナのアレストビッチ大統領府長官顧問は、一部の欧州諸国がロシアへの妥協を求めているとして不快感を示した。
ウクライナ第2の都市、東部ハリコフの中心部で26日、露軍の攻撃で民間人7人が死亡、17人が負傷した。地元当局が通信アプリ「テレグラム」で明らかにした。東部ルガンスク州のガイダイ知事は同日、要衝のセベロドネツク市近郊の高速道路を露軍が一時的に掌握したと公表した。その後、ウクライナ側が奪還したが、露軍の激しい攻撃が続いているという。