ポトマック通信

銃で消せない人生

23日付の米紙ワシントン・ポストの一面の写真に目が留まった。黒い瞳の少女の遺影。名前はハナ、14歳。ミシガン州の高校で昨年11月末に起きた男子生徒による銃乱射事件で犠牲となった4人の1人とある。

日本人かも‥中面を開くと2つ年上の姉、レイナとの浴衣姿、事件3日前に撮影された家族の集合写真もあった。「姉妹は衣服、友人、皮肉っぽいユーモア感覚、それに第2言語の日本語をシェアしていた」

父親はミシガン、母親は横浜出身。姉妹は幼少のころ東京で2年半過ごし、夏を福岡の祖父母宅で過ごす。米国に戻っても、2人は学校で日本語を話すのが好きで「教師は聞き耳を立てることができなかった」。光景が目に浮かぶ。

ハナの存在を消したくない-。姉は亡くなった生徒の追悼碑を撤去しようとした高校に異を唱え、事件の真相解明を求め続けた。「なぜハナが‥」。今もその答えが見つからない。

ニューヨーク州のスーパーで今月14日に殺害された黒人10人の追悼演説でバイデン大統領は全員の生きた姿を要約して読み上げた。一人一人に消せない人生がある。ハナも同じだった。

24日にはテキサス州の小学校で児童19人の未来が奪われた。なぜ繰り返すのか。周囲に敵意や殺人願望を抱く若者に銃がわたり、地域は見逃し、政治は銃社会の維持を規制より優先してきたからだ。(渡辺浩生)

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