米国務長官演説 中国の誤認回避へ「競争と対話」

26日、米ワシントンで、中国政策に関して演説するブリンケン国務長官(ゲッティ=共同)
26日、米ワシントンで、中国政策に関して演説するブリンケン国務長官(ゲッティ=共同)

ブリンケン米国務長官は26日、首都ワシントンで行った演説で中国を「国際秩序への最も深刻な長期的試練」と位置づけ、対中国の「戦略的環境」を整える考えを強調した。ブリンケン氏は同時に「中国との紛争や新しい冷戦」を望んでいるのではないと述べ、ルールに基づく国際秩序の実現に向けて中国との対話を加速させる考えを示した。

ブリンケン氏の演説は、20~24日にアジアを訪問したバイデン大統領と日韓両首脳の会談や、日米豪印の協力枠組み「クアッド」の首脳会合などを踏まえて行われた。

ブリンケン氏は、日本滞在中にバイデン氏が台湾有事の際に米国が台湾防衛に関与すると発言したことを念頭に、「米国の『一つの中国』政策に変更はない」と言明。中国による台湾への威圧だけでなく、「台湾独立も支持しない」と述べ、中台双方による一方的な現状変更を容認しない姿勢を改めて示した。

演説はロシアによるウクライナ侵攻が続く中でも中国との競争を最重要視していることを示しつつ、米中関係の緊張は望んでいないとのメッセージを発信することを狙った。台湾有事に関するバイデン氏の発言が拡大解釈されることへの危惧も背景にあるとみられ、中国がバイデン政権の立場を誤認しないよう細心の注意を払ったことがうかがわれる。

バイデン氏の台湾防衛をめぐる発言について米国では、民主・共和両党の有力議員らを中心に歓迎する声がある半面、中国による台湾への威圧を強めかねないとの指摘も相次いでいる。

米ジャーマン・マーシャル財団のアジア専門家、ボニー・グレイザー氏はバイデン氏の発言について、中国が台湾に武力侵攻した場合に米国が軍事介入するかどうかを明言しない伝統的な「戦略的曖昧さ」を弱める意図的なものだったと解釈。その上で、どのような状況ならば介入があり得るのかといった仮定の議論が過熱して米中の認識が混乱すれば「かえって抑止力は低下する」と指摘する。

こうした懸念を踏まえ、ブリンケン氏は演説で、台湾海峡周辺の「現状維持」が米国にとっての利益だとし、中国による侵攻や威圧のみならず、台湾側からの一方的な現状変更にも反対する立場を改めて明確にした。台湾の防衛支援のための武器供与を定めた国内法「台湾関係法」に沿った「一つの中国」政策に変更はないと強調した。

ブリンケン氏は、中国は「国際秩序を作り替える意思を持ち、その能力を高めている唯一の国」であり、習近平体制下で「国内でより弾圧的に、国外にいっそう攻撃的になっている」と批判。中国との競争では「この10年が決定的に重要になる」とも述べた。

バイデン政権は「米中競争」という長期にわたるゲームの進め方をいわば模索している段階にある。バイデン氏が訪日中に発表した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」なども含め、〝戦略〟の具体的な将来像を提示することが今後の課題だ。(大内清)

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