朝晴れエッセー

母・5月27日

先月83歳になった母は元気だ。今でも黒い髪は、これまで一度も染めたことがなく、健康で薬も服用していないことが自慢だ。最近は「終活、終活」と言ってはせっせと片付けをしている。

子供たちは皆遠方に住んでおり、3年前に定年を迎えた私が実家のある隣の県に単身赴任で再就職し、月に一度、車で2時間かけ、亡くなった父の墓参りと、母の様子を見に帰省している。

「あんた、これ使うんな?」。まただ…。母はご近所さんからのいただきものや銀行、商店などで配られる景品類を取っておいては、私が帰省したときに持って帰らせようとする。「そんなん、要らんで。だいたい終活しよると言いながら何で使いもせんものをもろうてくるんかなあ?」と言っても、「もったいないやん」と言う。

戦前生まれで、瀬戸内の島で育った母はものを大事にする。買い替えればいいような壊れた置き時計なんかも、器用に自分で直して使う。

ものを大切にするという母の性格は分かっているので「ありがとう」と言ってもらってもいいのだが、毎度毎度のことに「お母ちゃん、みんなから都合よく不用品回収に使われとるだけやで」と、心にもないことを言ってしまっては、言い過ぎたと後悔する。

過去、ご近所さんが火事で焼きだされたときに母がストックしておいた衣服、生活用品などを提供して、今でも感謝されている。要は世話好きなのだ。「まあ、人の世話ができるほど元気でいればいいか」と思うようにしよう。


岩原傑(58) 徳島市

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