捕虜交換が焦点に 露は「ナチス戦犯」主張

ウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所=22日(ロイター=共同)
ウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所=22日(ロイター=共同)

ロシアによるウクライナ侵攻で、投降や拘束された兵士らの捕虜交換が双方による交渉の焦点になりつつある。今月中旬には東部マリウポリの製鉄所で籠城していた2千人規模とみられるウクライナ側の兵士らが投降。彼らの捕虜交換を求めるウクライナに対し、露側は兵士の多数を占める民兵組織を「ナチス主義者」だと主張し、〝戦犯〟として裁く姿勢すらみせている。捕虜交換が実現すれば停戦への機運が高まるが、先行きは厳しい。

ウクライナ軍は17日、東部マリウポリの製鉄所を拠点に露軍に抵抗してきた兵士らの「戦闘任務完了」を宣言し、兵士らは露側の捕虜となった。ゼレンスキー大統領は彼らを「英雄」と呼び、ウクライナ政府は露軍兵捕虜との交換を求める考えを表明した。

しかしロシア側は、投降した兵士の大半を占めるとみられる内務省傘下の民兵組織「アゾフ大隊」を「ナチス主義者」だと批判。ロシアはウクライナ侵攻を正当化する理由に「ナチスの排除」を掲げており、彼らの返還は、その〝大義〟を崩しかねない。

そのため露下院のボロジン議長は17日、「ナチスの犯罪者は捕虜交換されてはならない」などと主張。「ナチス主義者」の捕虜交換を禁ずる法案が審議されることも発表された。ただ計画された18日の審議入りは見送られ、その後も延期されているとみられる。理由は不明だが、露紙コメルサントは法案が厳格すぎ、今後の交渉で「かえって露側に不利に働く」可能性を指摘した。

インタファクス通信によれば、東部ドネツク州の親露派勢力幹部は23日、製鉄所からの捕虜は「国際法廷」で裁かれるべきなどと主張したが、「国際法廷」が具体的に何を意味するかは不明だ。「ナチス主義者」などという一方的な理由付けで裁判を行えば、その不当さをかえって国際社会に印象付けかねないのが実情で、露側の対応が注目される。

ウクライナ側は、非武装の民間人を銃殺したとして首都キーウ(キエフ)の裁判所で23日に終身刑を言い渡された露軍兵士のワディム・シシマリン被告をめぐり、「捕虜交換の対象となりうる」(ベネディクトワ検事総長)などと表明しているが、露側の反応は不明だ。捕虜交換は双方の歩み寄りを促すが、激しい駆け引きの材料になるのは必至で、実現のハードルは極めて高いとみられる。

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