海底のレクイエム

秋島の特設運送船「乾祥丸」

「乾祥丸」(けんしょうまる)は、1938(昭和13)年に竣工した貨物船である。1940(昭和15)年に特設運送船「雑用船)として海軍に徴用され活躍したが、1943(昭和18)年末にクェゼリンにおいてB‐24爆撃機の空襲により航行不能となり、トラックに曳航修理中に米機動部隊の空襲を受けて沈没した。

甲板上の様子。画面右手、船外に突き出るように見えている2本の棒状のものは搭載艇用のダビット(戸村裕行撮影、2012年12月)
甲板上の様子。画面右手、船外に突き出るように見えている2本の棒状のものは搭載艇用のダビット(戸村裕行撮影、2012年12月)

秋島(ミクロネシア連邦チューク州、フェファン島)の東、約1キロメートル。水深約42メートルのところに眠るこの船は、船橋(ブリッジ)の保存状態が良く、内部に入って見ることができる。

船橋内部にはお風呂やトイレ、キッチンがあり、キッチンは床のタイルがとても綺麗に残っていたり、卵焼き用? とみられるフライパンなどが当時のまま残っている。

機関室にはさまざまな工具類を始め、発電機などの機械類、大きなピストンシリンダーも並んでいる。

水深が平均的に深く、エンジンルームなど閉鎖環境に入っていくダイビングとなるためにダイビングの中~上級者向けの船となっている。

甲板上に散乱する調度品。中央に見える陶製の洗面台は、ライオンと「T・S」ロゴマークと「TOYOHASI JAPAN」の文字から、豊橋製陶所のものと知れる(戸村裕行撮影、2012年12月)
甲板上に散乱する調度品。中央に見える陶製の洗面台は、ライオンと「T・S」ロゴマークと「TOYOHASI JAPAN」の文字から、豊橋製陶所のものと知れる(戸村裕行撮影、2012年12月)
ライトに照らし出された厨房もまた、往時の姿をよくとどめており、錆はあるものの画面左側に並ぶオーブンなどが明瞭である(戸村裕行撮影、2012年12月)
ライトに照らし出された厨房もまた、往時の姿をよくとどめており、錆はあるものの画面左側に並ぶオーブンなどが明瞭である(戸村裕行撮影、2012年12月)
厨房に転がる酒瓶と調理器具。木製の柄こそ腐食して失われているが、緑青のふいた銅製の四角いフライパンは、今も我々の身近にある「卵焼きを作るアレ」である(戸村裕行撮影、2012年12月)
厨房に転がる酒瓶と調理器具。木製の柄こそ腐食して失われているが、緑青のふいた銅製の四角いフライパンは、今も我々の身近にある「卵焼きを作るアレ」である(戸村裕行撮影、2012年12月)
機関室内の運転室ないしは配電盤。機関室内ではエンジンの横にばらばらに機関員がついているわけではなく、多くは主として計器や操縦装置の集約された運転区画で操作を行っていた(戸村裕行撮影、2012年12月)
機関室内の運転室ないしは配電盤。機関室内ではエンジンの横にばらばらに機関員がついているわけではなく、多くは主として計器や操縦装置の集約された運転区画で操作を行っていた(戸村裕行撮影、2012年12月)

(取材協力 ダイビングサービス「トレジャーズ」)

水中写真家・戸村裕行

1982年、埼玉県生まれ。海底に眠る過去の大戦に起因する艦船や航空機などの撮影をライフワークとし、ミリタリー総合誌月刊『丸』にて連載を担当。それらを題材にした写真展「群青の追憶」を靖國神社遊就館を筆頭に日本各地で開催。主な著書に『蒼海の碑銘』。講演、執筆多数。

雑誌「丸」
昭和23年創刊、平成30年に70周年迎えた日本の代表的軍事雑誌。旧陸海軍の軍 艦、軍用機から各国の最新軍事情報、自衛隊、各種兵器のメカニズムなど幅広 い話題を扱う。発行元の潮書房光人新社は29年から産経新聞グループとなった 。毎月25日発売。

●月刊「丸」のホームページ

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