神戸連続児童殺傷事件 遺族了承なき手記出版の意味は

太田出版から出版された手記「絶歌」
太田出版から出版された手記「絶歌」

神戸連続児童殺傷事件から今年で丸25年となるのに合わせ、加害男性(39)が「元少年A」として執筆した手記「絶歌」を出版した太田出版(東京)の岡聡社長(61)が、産経新聞の取材に応じた。事前に遺族の了承もなく物議を醸したが、「凄惨(せいさん)な事件が起きた背景を社会で共有することで問題提起をしたかった。今でも出版の判断は正しかったと思っている」と言い切る。

打ち合わせで加害男性と初めて会ったのは平成27年の年明け。「事件を起こした少年Aではなく、あくまで原稿を持ってきた人として会った」と振り返る。加害男性と面談を繰り返し、タイトル「絶歌」は加害男性が考案した。

同年6月に出版。初版の10万部はすぐ売り切れ、翌7月に重版。現在の発行部数は25万部にのぼる。決して加害男性の犯行を肯定するつもりはなく、「中学生がなぜ凶行に及んだのかを本人が直接つづったものは、少年犯罪を考える上で大きな社会的意味があると考えた」と強調する。

ただ、遺族らに無断で出版を進め、遺族側からは「精神的な二次被害」などと猛反発を受けた。社内にも「事前に許可をとるべきだ」という声もあったが、社内で協議の末に遺族側には伝えない方針を決めた。「ご遺族の心を乱してしまったが、それでも出版には意味がある」と述べる。

出版から7年。手記の印税は加害男性に渡っており、「後の使い道は本人に任せている」という姿勢だ。加害男性は出版の1年後、印税による賠償の支払いを遺族に打診したが、受け取りを拒否された。それでも、「今後も犯罪に関わった人から手記が寄せられれば、社会に共有すべきか検討した上で出版する」。

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