歌舞伎や文楽を育んだ大阪・道頓堀の劇場街としての歴史を伝える「道頓堀ミュージアム並木座」(大阪市中央区)が今春、開館3周年を迎えたのを機にリニューアルし、人気となっている。江戸時代に日本で初めて「回り舞台」が実演された道頓堀の劇場街の活気を伝え、観覧形式で古典芸能の魅力を伝えている。
同館はグリコの看板で有名な戎橋の東側、道頓堀通りに面したビルの1階にある。名称は舞台を回転させて場面転換する回り舞台や昇降装置の「せり」などの舞台装置を考案した江戸期の歌舞伎作家、並木正三(1730~73年)にちなむ。
館内は、竹で編んだ天井や提灯(ちょうちん)など昔の芝居小屋を模した造りで、中央には直径1・8メートルの回り舞台を設置。鬘(かつら)を付けて歌舞伎衣装パネルから顔を出し、役者気分で舞台を体験することもできる。
「かつて道頓堀にあった芝居小屋をイメージした内観。道頓堀といえば今では食の街のイメージが強いが、江戸時代から近年まで、角座や中座など『道頓堀五座』と呼ばれる芝居小屋が軒を連ね、歌舞伎や文楽などでにぎわう上方芸能の中心地だった」と、同館を運営する不動産会社「山根エンタープライズ」社長の山根秀宣さん(56)は話す。
有志らと地域活性化などに取り組んでいる山根さんは「せっかく道頓堀に足を運んでくれるお客さんに、この街の歴史を知ってもらいたい」と、かつて文楽が上演されていた朝日座の向かいのビルを取得し、平成31年3月に同館をオープンした。
館内では劇場街の歴史をパネルや浮世絵、五座の写真などで分かりやすく解説。「歌舞伎や演劇などの演出に欠かせない回り舞台は、道頓堀から世界に広がった」と山根さんは力を込める。
今回のリニューアルでは観覧自体を芝居化し、5カ国語対応の音声ガイドで映像による時間旅行が楽しめる。入館方法は、生ガイドと動画、館内見学がセットになった「たいけんコース」(1200円)▽生ガイドなしの「まなびコース」(600円)▽スマホの充電やWi―Fiも利用できる館内見学のみの「いこいコース」(300円)―の3コースを設けた。
開館時間は午後1~5時(イベントがある場合はサイトを確認)、月曜休館。問い合わせは並木座(06・6538・4880)。